2007年秋のツアー記

15日(土)------------------------------------------神戸Big Apple/プログレ・ナイト

共演:井上のぼる(g) 初坂恵美(Key)松田"Gori"広士(ds)。去年の夏の江戸ツアーで共演した、関西の超絶プログレ・インスト・ユニットIgzit-9にリズマ・クノムバスが参加する形で実現した神戸のライヴ。日頃は変拍子&キメの嵐!みたいなIgzit-9の皆さんに、即興に付き合ってもらふ、といふわがままなライヴ。面白い。

どれも素晴らしかったが、ワシの「あやかし」にIgzit-9の皆さんが入ってくれたナンバーは、初坂さんのエレピがマイルスの「ビッチェズ・ブリュー」を思はせる秀逸の出来!!。ワシのえせニックが、素晴らしいジャズロックヴァージョンに生まれ変わった。感動。

新神戸の駅から会場まで、30分ほど歩いた。村上春樹の初期の作品で、恐らく神戸が舞台になったもの、と推測されるものがある。その文章から思い描く風景を歩くのは、楽しかった。しかし、あんなに坂が多い町とは思ってもみなんだ。

16日(日)------------------------------------------移動日

サウナで仮眠の後、ゲンタさんの車で東京へ向かう。高速道路をただひたすら東へ向かって走る、単調で、しかし仲々悪くない旅。

初めてオルカ団で東京に行ったのも、かうして車での旅だった。あの時も富士山が見えず、がっかりしたが、けふも白くけぶって何も見えず。何度かこっちに来てゐるが、富士がマトモに見えた事って、何回あるんだらう?。

17日(月)------------------------------------------下北沢Heaven's Door/シンガー・ナイト

共演は大阪出身のシンガーソングライターChamiちゃん。リズマ・クノムバスでそのバックを務める。Chamiちゃんのギターをバックにワシも唄う。東京では「さんましら」以来久しぶりにこんなに唄ものを演った。えせニックロック時々フォーク、といふワシの音楽性に、たいへんマッチした良いライヴ。Chamiちゃんのファンからも好評で、是非また一緒に、と云はれる。しかし彼女は、そろそろメヂャーへの進出が決まりかけてゐて・・・・、といふ微妙な

ワシの個人的な意見を云はせてもらへるなら、Chamiちゃん、とてもGOOD!。なので、できればメヂャーなんぞに行って不自由な活動するより、「こっち側」にづっと居てもらって、気軽に一緒に演れたらなぁ、と思ふんですが(笑)。まぁでも彼女らの年頃でメヂャーを目指さん方がオカシイか・・・・。

ここはいわゆる「投げ銭」スタイルで演った。割と沢山の人がお金を入れてくれはしたが、中にはスロットマシンのメダルや、ドルのコインなどを入れる輩もゐて、ワシらがこれで生活してゐる、と云ふ事を、まぁ分かってないんだからしょーがないにしても、真剣に音楽を演ってゐる人間に対して、これほどの無礼はない。喰うぞ。

18日(火)------------------------------------------オフ

朝方買い物に行き、食料品を買い込む。けふから東京自炊生活、にす。

19日(水)------------------------------------------オフ

昼間、お気に入りの町高円寺を散策。純情商店街を何度も往復して楽しむ。あの乙武くんが、ものすごい不機嫌さうな顔して立ってゐたのを見ゆ。

20日(木)------------------------------------------西荻窪奇聞屋/イムプロヴィゼーション・ナイト

基本はリズマ・クノムバスのデュオライヴで、ゲストにたなべかっぱ君(Gu)と岸川恭子さん(Voice)に入ってもらふ形。曲は各自で聞き込んでゐる程度。あえてきっちり決めずに演った。ゲンタさんのドラムンベースの上でワシのベースと恭子さんの超絶ヴォイスが暴れ回る、など、たいへんマニアックなライヴ。かっぱ君はこのやうな即興主体のライヴは全く初めてで、結果的にはほとんど手も足も出なかった様子。二人のお客さんから、全く正反対の感想を頂いたのがオモロイ。

なんか「焦点」が絞り切れなかったライヴ、と云ふ感はある。お客さんもあからさまに戸惑ってゐた。演ってる方の楽しさが、観客に伝わらない典型的なライヴ、といふ感じだった、のではないか?。ん〜〜〜〜難しいね。

ワシの東京兄貴分、BARAKAの依知川伸一さん、と、あの、トミ藤山さんが来てくれてゐた。本来ならお二人とも「御招待」すべき人なのだが・・・。

21日(金)------------------------------------------国立地球屋/轟音ナイト

お馴染み酒井泰三さんとのライヴ。単なるファンから、今年のうちに3度も共演をする運びと相成った。これまではデュオとしての共演ばかりだったが、今回はゲンタさんのパーカスも入ったトリオ。で、泰三さん、本領発揮、のアンプ2台フルドライヴ!。ゲンタさんの音、ほとんど聴こえない(笑)。ワシも負けじと、久々の爆音ベースで応戦。凄まじい音圧だった事だらう。全編即興で、ナニカ演りだした人に後がついて行く、みたいなライヴ。

ちょっと前にこの地球屋で、元CANのダモ鈴木が、やはり全編即興で、それはそれは素晴らしいライヴを演ったさうな。そのやうな事がワシらにも演れたら、と思ったが、どーかな?。即興って、ホンマに難しい。

この日は従姉妹やマイミク仲間、など友人知人が沢山見に来てくれた。中でも嬉しかったのが、03年と04年に共演した唄姫、ヒーコちゃんとの再会。病を患ってしばらく音信不通になってゐたが、元気になって、このたび結婚も決まったと云ふ。良かった。おめでとう。

22日(土)------------------------------------------日野Soul K/独弾ナイト

今回唯一のソロ。日野市は東京の西、吉祥寺からでも30分くらいかかる、ほぼ八王子に近い静かな町。同じく旅音楽家の城直樹くん(Gu)とのカップリング。打撃系ギタリスト、と異名を取る城くん、ギターがばっこし割れてゐる(笑)。押尾コータロー以降、日本でも割とニッチを得たこのテのニューエイジ・ギターだが、こんなに激しいやつは初めて見たよ。

ワシは比較的ナーヴァスになってゐたが、良いモノが演れた。ソロの練習なぞ、全然してなかったが、新旧取り混ぜて、約1時間のライヴ。お店には、鬚をたたえてギターを弾く男性の写真があちこちに飾ってあり、もしやこの店に所縁のある方が亡くなられたのでは?と思ひ、「此岸之朱」を追悼詩に変えて唄った。今はもう居ない人の為に、なにかが、だれかに、上手く、伝わってくれたら・・・と思ひつつ。終演後ママさんが「ありがとう」と云って下さった。

今回、このライヴイベントへの参加を一番先に決め、それに合わせてツアーを組んだ。主催のJさんは、ワシのライヴを見て、是非地元に呼びたい、と思っと、といふ。良い街と良い店を知る事が出来て、感謝。期待に応えられたのなら良いが・・・・。

23日(日)------------------------------------------西荻窪音や金時/民族音楽ナイト

これもお馴染み、超絶ヴァイオリン弾き壷井彰久くんとのデュオ。これまでなんかの流れの中で二人だけで演るシーンはあったが、完全なデュオ形式のライヴはけふが初めて。ちょこっとスタヂオ入りしてかる〜くリハやっておく。壷井くんのリクエストで、八割が唄もの。これがまぁ云ふまでもないが、ワシのオリジナルが、「あの」ヴァイオリンによって彩られて行くのだ。こ・れ・は・たまらん素晴らしさよ。

当然ながら、即興の反応も素晴らしい。凄いねぇ。この半分、いや、五分之壱くらいでもイイから、広島に居らんかねぇ、かういふ感覚のヒトが。そして、壷井くんのバンド、ギターとヴァイオリンの超絶コンビ「ERA」の曲をベースで演る、といふ無謀な試みも成功。『アレをベースで演るかね?』と云はれた。

最終日、沢山の人が見に来てくれた。東京での全行程を見てくれた人もゐる。本当にありがたい。けふは壷井くんのファンにもアッピール出来たようだ。オモロない演者には容赦ない、との噂の「音金」のマスターママさんにも気に入って頂けて、とりあへずひと安心。嗚呼よかった。お江戸4連チャンもこれにて、幕。みなさんありがとう。

この「音金」。名物の「ネパールカレー」が絶品!。このカレーを喰ふ為だけにでも、店に行く価値あり。

24日(月)------------------------------------------広島ゲバントホール/レコ発ライヴ:しーなとシュウ

朝9:00の新幹線で広島を目指す。ほとんど寝てゐた。昼過ぎに広島に着。まぁ、これ考えれば、東京〜広島間って近い、っちゃ近い気もす。

けふは、Mebius、本家熊野屋、麻紀音、といふ広島若手ポップユニットに、おぢちゃんおばちゃんのしーなとシュウが何故?、といふライヴ。まぁMebiusなんかはメンバーも良く知ってるし仲良いし、別に浮いてるかんぢはせんけど。ホールコンサートと云ふ事で、集客は大丈夫かいな?といふかんぢ。4ツもバンドが出るにしては、全然客足が遅い。ひとつひとつはワンマンでも演れるバンドなのに、これはどうよ?。

さてワシらのライヴであるが、このデュオで、久々に出来の悪いものをやってしまった、といふかんぢ。なんとも力の入らないライヴだった。これほど意識の交感が成されなかったライヴも、最近のこの二人では珍しい。レコ発、と云ふ事でCDについてのあれこれはあったが、いつも見に来てくれるファンから、けふの演奏の事が一言も出なかった、といふ事が物語ってゐるやうに思ふ。

まぁ、ライヴは活きもの、だ。いつもいつも良い事ができる、とは限らない。くよくよせずに、前を見て進むのみ、やね。


謝辞

今のワシを進ませてゐるものは、紛れもなく『焦り』である。

それを否定した事もあったが、今は正直に云へる。ワシは焦ってゐる。

生きて、声を出せ、指が動くうちに、あとどれだけの事を知れるだらうか?。

ワシはもっと知りたいのだ、あの「音」の先にある、あの世界を。

共演してくれた皆さん、見に来てくれた皆さん、場所を与えてくれた皆さん、宿を与えてくれた皆さん、帰りを待ってくれてゐた皆さん。

に、心からありがとう。

不義理で怠惰で、傲慢なワシを、許したまえや、友よ。


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