6月


1週目


1日(火)-----------------------------------------------------------------------------------

舞踏家大野一雄氏の訃報。10年以上前に、舞台系のライヴで共演者から『見ておけ』とヴィデヲを渡された。その時既に現役最高齢のパフォーマ−、といふ事だった。あれからもづっと舞台に立ち続けてゐたらしひ。車椅子に座り、上半身だけで舞う姿を見た事もある。103歳。合掌。

いつまでも現役でゐる、といふ事の素晴らしさと過酷さを思ふ。それは「他の選択肢の無さ」でもある。ミッキー・ローク主演の「レスラー」を見た時も思った。好むと好まざるとに関わらず、ワシにももう、音楽を演ること以外の選択肢は残されていない。

音楽家として生くる以上、『いつかは壱発ハデな花火を』とか『ヴァっと海外でブレイクを』とかも当然思ふが、なにが夢かと云へば『死ぬ瞬間まで音楽が演れる=音楽だけ演ってゐられる』人生、これに尽きる。

なんかいつまでもぐずぐずと寒く、急に雨なんぞも降りやがったりして、少々風邪っぽくなってきた。この壱年、珍しく風邪らしい風邪をひかずに来れてゐたのだが・・・。

2日(水)-----------------------------------------------------------------------------------

専門学校で「レコーディングの授業」があり、生徒を派遣し、ツイデに見学。

録音、といふ状況で必要とされるのは「地力」だ。地味な練習で基礎的な技術をどれだけ磨いてゐるか、に尽きる。その点では今の弐年生は合格点。小手先の派手技ばかりに血道を上げてゐる壱年生ではかうは行くまい。その時が楽しみだ。ははは。

しーシュ昼リハ。しーなさんがカヴァー曲に歌詞を書いて来たのだが、これが仲々白眉の出来。息子の事を唄ったもののやうだが、一緒に演ってゐて思はずウルと来てしまふやうなかんぢだった。珍しくワシが手放しで誉めてしーなさん意外さう。誉める時は誉めます。「6/13老化防止ライヴ」で演りますよ。聴いた方が良いよ。

母親、といふ事を思ふ。ウチのオフクロも教育には厳しい人で、ワシが勉強もせずギターばかり弾いてる事に批判的だったが、高校生になってますます音楽にのめり込むやうになってからはなんにも云はなくなった。その事には今もほんとうに感謝してゐる。

しーなさんの息子の未来に幸多かれ。そしてワシらにも。

3日(木)-----------------------------------------------------------------------------------

レッスンの合間に、明日の藤井政美とのデュオリハを。Soe'sで演ってゐたマサミの曲を、ベース1人で出来るやうにアレンジしてみた。まぁなんとかなりさう。このデュオは、カミンからもオファーがあり、今月末にふたりで3ステージ演る事にもなってゐる。まぁなんとかなるだらう。

今Soe'sを演らぬのは、固定メンバーでの即興、にひとまづ飽きたから、と云へる。「個」の集団らしく、おのおの活動に邁進しておれば良いと思ふ。また一緒に演る時が来れば演るだらう。いづれまたパイグとのデュオも演ってみたいしね。

イマイチ体調がすぐれぬのだが、その後ひとりリハを2時間やった。唄ってると喉の痛みが引くのが不思議。アドレナリン、ですかね?。最近木曜日は、昼過ぎにはスタヂヲに来て、その後もづッと篭ってゐる事が多い。カネを使わぬから良いが、すこし侘びしい気もす。

4日(金)-----------------------------------------------------------------------------------

ワシには「体調が悪い時に眠れない」といふ厄介な特徴がある。ここん処なんかぐづぐづと調子悪く、そのせいで眠りも浅い。眠りが浅いから余計に体調が優れなくなる、といふ悪循環。けふはライヴだと云ふのに、咳が出て辛い。

専門学校に行って3コマ授業をしたのも悪かったか、喉が完全に塞がってしまった感あり。会場入りしてマイクチェックなどするも、声が全く定まらない。「声が出ない」と云ふ時はチカラで張り上げれば出るのだが、けふのはちょいと違って、声帯が安定しないかんぢ。何度かチャレンヂしてみるもダメ。仕方ないのでけふは唄ものをカットする事にした。ソロやしーシュのライヴでなくて良かった、かな?。

けふの相棒が藤井政美、といふのも心強い。唄なしでも「持って行ける」面子だ。けふはベーシストとしてライヴに臨む。

開演時間定刻には寂しい客入りだって、「アーこりゃどーかいな」と思ひながら始める。が、壱曲終わって顔を上げて吃驚。いつの間にかいっぱいのお客さん。電気ベースとサックスのデュオ、といふ変わった布陣でのライヴだったが、まぁこの二人にしか出来ない事は演れたと思ふ。流石は名手マサミ、だな。珍しくブルースなんぞも演ったりした。

唄ものが出来なんだ事は残念だが、それでも仲々鳴りやまない拍手は、まぁ盛況で終わった、と云っても良からう。流れのお客さんもありがとうありました。

けふはまぁベーシストとして及第点の仕事は出来たのではないかな?。達成感はないが。絶対無理だけど、自分の生のライヴを観客として観てみたいものだ、と思ふ。どんなんだろね?この男は。


2週目

5日(土)----------------------------------------------------------------------------------

やっと休める!てかんぢの土曜日(いや・・・そんなに働いてもおらぬが・・・・)

低音部での野太い和音、に可能性を見い出してから、エレアコベース欲しい衝動がピークに達しつつある。同じ事を演っても、電気ベースで弾く和音とは明らかに違ったモノになる。この野太さを、「祈り部」とのセッションで使いたい・・・。う〜〜〜む、安いので充分だから買っちまおうかなぁ・・・。このテの楽器って「試奏」できる店がほとんどない、てのも問題ありやな。

夜は「つつ井食堂」。常連客の会話が、みーんなちょっとづつデマが混じってゐてオモロい。けふはこれが唯一ドアーを開けて外に出た行動。

6日(日)-----------------------------------------------------------------------------------

この週末、広島市内では「とうかさん」といふ夏越しの祭りが行なわれてゐて、これに最近、浴衣姿で詣でる若者が増えた。勿論、一過性のファッションでやってる事だから、男も女も、見事に着こなせてゐない。一部の若い娘など「汚い」とすら思へる。黄色だの桃色だのといった原色の和装がさらにその品位を下げ、なをかつそれがパンダのやうなメイクをし、なをかつ屋台の極彩色の飴なんぞねぶりつつそぞろ歩く姿は、交配期の昆虫のやうな毒々しさ。まさに『世紀末』の感あり。

考えてみるに、此所数年「学校の制服」をちゃんと着こなせてない餓鬼が増えた気もす。ごくごく普通に着れば普通の形を作れる制服が着こなせぬ訳だから、浴衣が着こなせぬは云はずもがな。こんな奴ら珈琲豆の入った袋に穴開けて与えとけば良いのだ。

そんな中、しーシュのリハ。最近はライヴを和装で演る事の多いワシら。まぁせめてちゃんと着こなしませうぜ、と話す。

7日(月)-----------------------------------------------------------------------------------

映画『ヴィヨンの妻』見る。原作は太宰治。おそらくは太宰本人がモデルであらうこの時代(終戦直後)の文学青年、の特徴でもあった底なしのナルシズムにうんざりもするが、とてもよく出来た映画だった。オモロい。

昨日のけふで、松たか子の和装が素晴らしい。着物とはかくあるべし。汚れ役が意外にハマる広末涼子も良。

各地の協力者と情報交換しながら、夏のツアーを組み立ててゐる。秋にちょいと大規模な旅をする予定なので、夏の九州への遠征は諦めやう。楽しみなのは8月の後半、名古屋からてらしましんご君と二人で南下して広島へ戻るツアー。1週間で6個所。18切符で移動しながらの旅となる。

8日(火)-----------------------------------------------------------------------------------

朝、飯を拵えてゐて生姜を刻んでゐると、珍しく手元が狂ひ、ぶじゅ、と音がして左手薬指の先をぐっさりと切った。切った瞬間に激痛を感ずるほどの深い傷。出血も凄かったが、生姜を切ってゐた訳だから殺菌は出来てゐる。それになんちゅーても、刃物で切った傷など綺麗なものだ。切れた肉を元通りにかぶせて包帯をしたら、もう痛みはなくなった。

日曜日がしーシュのライヴだからちょいとアレだが、まぁあと5日あるから大丈夫だらう。いざとなればジャンゴ・ラインハルトのやうに弐本指で弾く事も出来る。

けふはMIやんとのリハが入ってゐて、この指でどーしたもんかな、と思ってゐたら、MIやんから、今度は娘がムンプス(おたふく風邪)に罹患したと連絡。ワシはムンプスやってないので、患者の周辺に近付くのはマズい。ので、またリハが流れちまった。こらぁもうリハはするな、って事なんだらうね。

9日(水)-----------------------------------------------------------------------------------

けふは弐本指でレッスンしてみた。ワシは日頃から左手薬指はあんまり使わぬ方だから・・・とタカを括ってゐたが、かうなってみると意外に使ってるもんだな。「つい」指が動いてしまひ「いててt」となってしまふ。ん〜〜〜早く治さねば。

怪我の早い治し方(秘伝)

1:正規の治療(消毒、止血)はちゃんとする。
2:飯はしっかり喰ふ。
3:リラックスした状態で、
4:怪我(傷)を意識する。
5:その部分に今喰ったものが血になってどばどば流れ込んでゐる事を想像する。
6:よく寝る。

嘘っぽいやろ?。

10日(木)-----------------------------------------------------------------------------------

久しぶりに町中をうろうろしてたら、後輩のドラマーY子に会った。明るくてサバサバしてゐる割にミョ〜な色気のある娘で、お気に入りの女の子の1人。結婚して子供が生まれたはずだが、ぜ〜んぜん変わってない。それを云ふと『嬉しいスねぇ〜』と。

反対に、向こうは最初全然ワシに気付かなんださうで、それは『黒人に見えた』からだといふ(笑)。まだそんなに焼けちゃおらんが。さういや最近、ライヴ中の写真で妙にアフリカ人ぽくも撮れてたりして、なるほどさういふ進化を遂げて来たか、と。

久しぶりに田和列個でCDを。「Interspirit」。巨匠アンソニー・ジャクソンのキャリア何十年目にして初のソロ・アルバム、と話題の。ソロ、とは云ってもユゴス・ファカナスといふ若手ベーシストとの双頭作品、て事になってて、巨匠のソロパートはなし。元々作曲をしない人だから、当然自作曲作品もなし。これで「双頭アルバム」と云へるのか?て処だが。ユゴスと云ふ若手(と云っても30代の、自国ギリシャではヴェテランの名作曲家&ベーシスト)が「敬意を持って巨匠に思ふ存分弾かせた」作品。良く出来てゐると思ふ。

ワシはこの人の『ライヴでの意外なやんちゃぶり』が割と好きだ。前に出て来る事もない(座ってる)し、スラップもタッピングもせぬし、滅多にソロもせぬのだが、色んな場面で結構「おぉりゃぁあ!」てかんぢで弾きまくってゐるのが。たまにあるインタヴ−記事など見ても、真面目、と云ふよりは偏執狂めいた部分すら伺わせ、記者があきらかに「引いて」る場面も。「ベース馬鹿一代」なんだらうな。

11日(金)-----------------------------------------------------------------------------------

専門学校。4人中3人が楽譜を忘れて来ており、大カミナリを落としてやった。流石に神妙な面持ちで聞いてゐたが、はてさて何処まで堪えてゐることやら。こんな事に気を使って、ワシは小中学生の餓鬼を教えてるんぢゃないんだがな。

夜はかの壌 晴彦氏の「詠み芝居」といふのを見に行く。新世代の浄瑠璃、といったかんぢの。役者、朗読者、音楽、すべてナマ。とても面白い。今年の年末は、この演出家の仕事で動く事になるやうだ。楽しみでもあり・・・。

音楽で「秦琴(しんきん)」といふのがフィーチャーされてゐて、その乾いた物悲しい旋律は、見事に舞台にマッチしてゐた。奏者は深草アキ氏。もとファーイースト・ファミリー・バンドのベーシストだった人である。

とても良い芝居だったと思ふが、残念ながら集客はちょいと寂しいかんぢ。特に、演劇系のワシの知人友人がほとんど居なかったのが、少し気になる。


3週目

12日(土)----------------------------------------------------------------------------------

エレアコ・ベースを買った。のが届く。

ワシはこのテの楽器が出て来てからづっと、取り寄せては買わず、買っては売り、改造しては壊し、を繰り返して来たやうに思ふ。それほどにづっと興味のあるジャンルなのだ。結構高いやつも試した。ライヴでも使ってみた。んで、今の処の結論として『どれもダメ』と云ふ答えを出してゐる。結局、どの部分も中途半端で使えないのだ。

ので、発想を変え、これに「低音域のギター」といふニッチを見い出してみた。するともう安っすいので充分、といふ結論に至り。もうそのニッチに特化した、ミディアムスケール、22フレット(フレットレス)、¥3萬以内、といふ、ZENNといふメーカーのを買った。

これが思ったほど悪くない。荒々しくカッティングなぞすればベースとは思へぬ、またフレットレス故にギターとも思へぬ、独特にして異様なサウンドが得れり。このコストでこの出来ならば充分だらう。スケールが短いのでちょいと馴れがゐるが、ギターと思へば・・・。

まづは月末の祈り部とのライヴ「夏越しの祓え」で全面的にフィーチャーする予定。

13日(日)-----------------------------------------------------------------------------------

しーなとシュウ「老化防止デイライヴ」。

あいにくの雨だが、機材一式は昨日運び込んでおいたので、車壱台でドアtoドアでピっと会場入り。アップライトピアノに電気ベース、唄×2、といふ、自分らでPAをし乍ら演るにはちょいと厳しい状況だが、あれこれやって最善策を目指す。ワシがもう少し音響に詳しければ、ねェ。

開演時間にはほぼ満席。そこを狙った訳ではないのだが、デイライヴといふ事でか、 マダ〜ムのお客さんがほとんどだった。曲構成も大人しめに準備してゐたので、その点は成功。例の指の怪我がどう影響するか、だったが、テーピングだけして演って全く問題はなかった。広島では久々に「コキリコ節」を演ったが、じょんがらソロはここ何回かで一番の完成度。むしろ声の方がヤバかった。これは単に練習不足。ヴォイトレも真面目に演っとかな、ねェ。

終始リラックスした雰囲気で、まぁ好評のうちに終了。会場側にも喜んでもらへた様子。また演りませう。

そのままワシらは年末の舞台・・・・遂に動き始めたTip hotel vol2の打ち合わせに。大事な事が色々と理解できて、意義深い会議だった。が、この流れで行くとワシが「音楽監督」て事になりさうだな。ん〜〜〜〜ワシに出来るんかいな?。世には、梶山の云ふ事なんざききたくない、てヒトも多いですから、ねェ。

まぁ、やるからにはやります。

14日(月)-----------------------------------------------------------------------------------

昨年に引き続き、「サキシマ・ミーティング」を見に桑吐露まで行く。新良幸人下地勇、ふたりのオキナワン・ネイティヴシンガーのデュオライヴ。これがちょいとオモロい事が起きてゐたよ。

昨年までは、新良幸人の三線と唄声、その圧倒的な存在感がライヴ全体を包み、もう「すいませんでした!」の世界(笑)だった。あの唄の境地に果たして我らもいつか辿り着けるものなのか?と、しーなさんと語り合ったものだった。が、今回、ちょいと新良さんが調子悪かったのかナンなのか、スピリチュアルな唄の力、といふモノが半減してゐた気がする。さうなると浮上して来るのは下地さんの「地力」といふか「安定感」で、そこにブレてない強さ、がハッキリ見えたのだ。今年はステージが完全に下地さんのペェスで進んでゐた。

勿論、ライヴが良くなかった、なんて事は全然ない。素晴らしいライヴだった。

だが、その、なんてーのか、「勢い」と「安定」の関係、ん〜〜〜〜上手く云へぬなぁ・・・。勝ち負けで語る事ではないが、最終的にプロの音楽家としてどちらに軍配が挙がるか、て事を考え、最近ちょいと周りにゐる、所謂「天才型」「ひらめき型」のアーティストの、結局は「弱さ」といふものに気付かされ・・・ん”〜〜〜〜と思ふ。

15日(火)-----------------------------------------------------------------------------------

W杯で初戦突破したかなんかで日本中が浮かれ騒いでゐるやうなかんぢにしてあるが、その陰に小惑星探査機「はやぶさ」帰還の物語あり。

ワシも詳しくは知らなんだのだが、足掛け7年にも及ぶ宇宙の旅からの帰還。数々の故障を乗り越え、裏技を使いまくって全ミッションを終了したあと、「土産」だけを地球に届けて自分は流れ星になって燃え尽きる、といふ・・・。なかなかに感涙モノのエピソード。さらに大気圏突入直前、最後の力で地球の姿を捉えた写真!(これも「裏技」だったらしひ)。JAXAのスタッフって、絶対「宇宙戦艦ヤマト」のファンだらうな。

「地球か・・・なにもかも皆なつかしい・・・」

これしかし、この事に付いて触れたTV、新聞のニュゥスはホントにわずか。こんな偉大な業績を、ネットがなかったら知りようがない、てのはどーなのよ?。更に云へば、この宇宙開発も事業仕分けの対象なんだとか・・・。そらぁちょいと違うンぢゃあないのか?。

夜、「祈り部」との初リハーサル。原曲を聞き込んでゐたので割とスムースに演れる。今このバンドにはコード楽器が不在なので、ワシはそのニッチにゐる事になる。先述のアコベを使ってみると、これが狙い通り。アンプに繋いだ音もエェぢゃないか。が、やっぱり弾きづらい(苦笑)。馴れねば。

ナベちゃん、アコベに興味津々。『シュウさんの事ぢゃけぇ安っすいの買ったんでしょーねぇ』と云ふ。どーいう意味や?だがその通り!(笑)。

16日(水)-----------------------------------------------------------------------------------

「センセイはなんでソロで演ろうなんて思ったんですか?」と生徒が問う。それはまぁひとえに『演らざるを得なかった』から、といふ事なのだが・・・・・。

何度も書いてるし云ってるが、バンドで受けた仕事にバンドで出れなくなって、仕方なくソロで演ったのが最初。だがまぁ確かに、そこで『ソロでも演る』と云ふ意識が自分にあったからこそ演れたのは間違いない。さういふ考えには至らない人も多からう。大方はライヴ出演を辞退する方を選ぶだらう。それが「バンドのベーシスト」ならなおさらだ。だがワシは演った。

勿論ワシも最初から成功した訳ではない。初回こそ物珍しさもあって盛況だったが、その翌年演った弐回目は全然ダメだった。それの繰り返しだった。数々の失敗ライヴを経て、今まぁなんとか恥ずかしくない程度の事が演れるやうにはなった。

まぁ、云いたいのはね

ワシは、とにかく「演り続けて来た」と。

他の人が、辞めたり、悩んだり、凹んだり、他の仕事に就いたり、他の趣味に手を出したり、サイドビジネスをしたり、思想に走ったり、酒に逃げたり、薬に逃げたり、全てから逃げたり、言い訳したり、の間に、ワシはづっと「演り続けて来た」んだ、と。この小さな街で、音楽を生業として演り続けて来たのだ、と。音楽と共に生くる人生を優先して来たのだ、と。

ワシに言い訳は通用しませんぜ。

17日(木)-----------------------------------------------------------------------------------

祈り部のフミノちゃんが、自身のブログで宮沢賢治の詩を紹介してゐたのを見る。さういや詩人の詩、て最近読んでないな、と。で、高村光太郎の「智恵子抄」を久々に読んだ。

美しい。なんとうつくしい言葉の世界。最愛の妻の死を乗り越え、光太郎自身が再び立ち上がるあたりの詩が、特に好きだな。この時代の文人にしては結構長生きをした人にも思へるが、やはり最後は肺結核、かぁ。大変な時代だったんだらうな。

(略)あなたのきらひな東京が
わたくしもきらひになりました。
仕事が出来たらすぐ山へ帰りませう。
あの清潔なモラルの天地で
も一度新鮮無比なあなたに会ひませう。       高村光太郎「報告」

智恵子さん、統合失調症だったんだね。当時はこの病気も「発狂」といふ扱ひを受けてゐたのか・・・・。

18日(金)-----------------------------------------------------------------------------------

専門学校。なにか興が乗り、ひとコマ丸々「雑談」授業してしまった。まぁタマには良からう。生徒達の暮らしぶりを聞く。一人暮らしのヤツの家に溜まって楽しさうに色々やってるやうだが、あんまり羽目外し過ぎて追い出されんやうにしぃやお前ら。

夜は珍しく色々と用事。KOBAに行って知人の投げ銭ライヴを見る。口琴、ギター、パ−カスのトリオ。割とオモロい。良くこんなメンバー集まったな。こないだの投げ銭ライヴで意気投合したSM壌とかとまた会えるかな?と思ってたが、姿見へず。

その後PICOへ、さる計画の打ち合はせに。打ち合せはスグ終わり、ジェムベ教室のレッスン中だったので、ツイデに生徒さん達に混じってジェムベを叩く。

金曜日の夜、仕事を終えて街に出て、あれこれ動いてゐる。仲々良いと思ふ。


4週目

19日(土)----------------------------------------------------------------------------------

ヲルガン座にて「紳士淑女の為のヴァイオリンとベースによる迷宮名曲集」といふライヴ。

これ、主催のゴトウイズミちゃんと大槻オサムくんから話が来た時、前に演ったMIやんとのコンビで、『ヴァイオリン使う、ってんで良いなら』と但し書きを付けて引き受けたのだが、なんかいつの間にか凄いイベントになってゐた。パンフにはワシがウッドを弾く、みたいな事まで書いてあるし。弾きませんよ。まぁそれでもワシらはワシらの演れる事を演るしかないのだし、まぁいいか、と割と気軽に。

北九州からの「Duo Fantangos」、フミノちゃんとナベちゃんによる「フミノなべ(そのまんまやんけ)」、とワシら。

結果としてそれぞれの持ち味が出た、良いイベントだったのではないか?。満員のお客さんも大盛り上がり。ワシらのデュオはけふだけで「不気味系」としての存在を知らしめただらう。おおウケ。会場からは『こわぃ〜〜〜!』といふ声が盛んに挙がってゐた。観客を煽り、巻き込み、盛り上げるMIやんのパフォーマンスもお見事。

本人にも云ったんだが、MIやんって人はかなりのマイペース&スロースターターで、リハを演るたんびに「ホンマに大丈夫か?」といふ気にさせられ、正直本番までに気が萎える事が多いのだ。ワシはどっちかってーとリハをハイテンションで演って本番でチカラ抜いて演るタイプなので。

だがお客さんの前に立った時のMIやんは、やはり特殊なオーラを放つ存在となる。今の処、彼女がステージ上で期待を裏切った事は、ない。まぁそれを「実力」と云ふのは躊躇われるが、ライヴの相棒としてオモロい存在である事は間違いない。ライヴを終えると、また一緒に演りたいな、と思ふ。今回もさう思った。

まぁ、MIやんお疲れ様でした。

なんか10年以上前のS.Y.U.K.(20代後半から8年在籍してゐた超絶技巧ジャズロックバンド)のライヴを見てくれてた人も来てゐて嬉しい。S.Y.U.K.かぁ・・・。あの頃は売れるとかウケるとか全く考えないで、とにかく自分らが凄い音楽を造り出してゐる事そのものにハイになってた時期だったな。週3回4時間づつのリハが楽しみで仕方なかった。

時は流るる。

20日(日)-----------------------------------------------------------------------------------

いーぃかんぢに曇天。そのくせ暑くはなく、引きこもるには絶好の日和だ。で、引きこもる。朝のうちに譜面を書き、教材用のコピーをし、少し練習を済ませたら、あとは読書と映画。

DVD「パラノーマル・アクティビティ」。超B級ホラー映画、ださうだ。終始ひとつの家の中のショットで、役者も4人だけ(しかも二人はちょい役)。確かに全くカネはかかって無ささう。映画評とかでは『全く怖くない』『悲惨なシロモノ』『失笑が起こるホラー』などと酷評されてゐるが、え?ワシ充分怖かったんですけど・・・。なんか、すべてが「住み慣れた家の中で起こる」てのが・・・・。

変に記憶に残り過ぎて、その夜よく眠れなんだ。眠れん事でさらに映画の場面など思ひ出し、起きてる事が怖くなり、てあれ?ワシは恐がりなのか?(笑)。

21日(月)-----------------------------------------------------------------------------------

ワシの東京の宿主、久保田涼子が、四国のお遍路を(途中まで)終えて広島に帰省してゐる。ので、少し会って話しする。なんと太ってゐる(笑)。お遍路ってさういふモノなのか?。まぁ確かに地元の人の応援や励ましを『施し』といふ形で受けながら、の巡礼がお遍路の意味を成すものではあるが・・・。

ワシも四国をツアー中、ベース持って荷物引きずって歩いてたら、『休んでらっしゃい』と声をかけて頂いたりした。四国とはさういふお土地柄なのだ。

りょーこと別れ、ひとり映画を見に行く。デンゼル・ワシントン主演「ザ・ウォーカー」。原題は「A book of Eli」。おとぎ話のやうな映画だった。

主人公に想ひを寄せ、行動を共にする娘が、アンヂェリーナ・ジョリィにチョイ似でややエロでGOOD。ミラ・キュニス、といふウクライナ出身の女優。似てる、と思ったやうに『第弐のアンヂー』と云はれてゐるらしひ。劇中では子供に見えたが26歳だって。う〜〜〜〜む。

夜は祈り部とのリハ。上手く交ざれるやうにはなったが、まだ「ベーシスト」の色合いが強いな。もっと訳の分からんモノ、として交ざれたら大成功なんだが。

22日(火)-----------------------------------------------------------------------------------

しーシュのリハ。フラットワウンド弦に張り替えたエレアコベースを持って行く。しーなさんには大好評。確かに悪くない混ざりだと思ふ。ただやっぱり「ガツン」と来てほしい時にはやや物足りぬかんぢか。これに比ぶれば、やはりヴァネッサは「じゃじゃ馬」てかんぢがするなぁ。このアコベにはなんて名前を付けやうかな?。

法外に値上がりした健康保険料を払ふ。昨年、向こうの不手際で保険料の計算が合ってた合ってなかった、てのがあり、2〜3回に渡って訂正支払い表が送られて来てゐた。そして正規の金額は全て払った、といふ事になってゐる(領収書はある!)のだが、不足分とかいふ追加請求が来てゐる。¥2000某の金額なのだが、絶対に払わん。

23日(水)-----------------------------------------------------------------------------------

最近、ケータイに迷惑メールが喧しく、癪に触るがメアドの変更も考慮せんとす。が、ツイデなので此所に来てワシもiPhoneなるものに機種変せんや?と鑑み。だが、調べてみるとiPhoneなるはパソコンとの交情なしには成立せず、との事。して我が家のパソコンは旧式にて、その交情に対応する術なしと知れり。嗚呼。

てな訳で、メアドの変更も莫迦莫迦しくなり、迷惑メールは入るに任せる。世界には耐えてゐればそれで済む問題もある。

24日(木)-----------------------------------------------------------------------------------

明日のライヴのリハを藤井政美と。この二人が演ると即興、と思はれるもナンなので、ここん処はスタンダードを演ったりブルーズを演ったりしてゐる。さういふリハ。

いま演ってみたいライヴは、タップ、ヒップホップ、ベリー、コンテンポラリー、それぞれの精鋭ダンサー1人づつとワシの、組み替えコラボライヴ。1曲づつダンサーが代わり、それをづっとワシがベースとヴォイスで対応するの。企画タイトルは「舞〜bu〜」。会場は、まぁ、あそこだな。コンテのダンサーはもちろん関本麻須美でなくては。あとヒップとベリーのダンサーは大体目星が付くんだが、タップが・・・・。

う〜む妄想は膨らむ。

25日(金)-----------------------------------------------------------------------------------

雨もやう。W杯はなにやら日本が勝った様子。もう少しの間めんどくさいな。専門学校で3コマ授業の後、カミンにて藤井政美とのデュオ。例によってGパンの裾をまくって、雨の中歩いて会場入り。

マサミとデュオを演る時にいつも悩むのは、どーいふニッチで絡むか、だ。彼はワシにジャズマンのやうな事は期待しておらず、むしろワシが得意としてゐるやうな事を演ってくれれば良い、と考えてゐる。たしかにさうする他の演り方を知らんのだが、これがなかなか難しい。何度練習して行っても、いざ本番になるとどーしても、なにか狭い所でムリヤリ背伸びをしてゐるやうなキレの悪さを残してしまふ。ワンコードでソロを取れ、となれば何時間でも演ってられるんだが・・・・。まぁ演って馴れて行くしかないのだらうな。この際なので、カミンに月イチぐらいのペースで入れてもらふやうにした。磨くのだ。日々精進である。

お客さんは多くはなかったが、まぁ喜んでもらへたやうだ。けふは「夜明けの海ごっこ」を演ってマサミに入ってもらった。この唄もだいぶ良いかんぢに唄えるやうになった。

雨はやむ気配なく、タクシーで帰らんとすが、マサミの可愛い嫁さんが迎えに来てくれたのに便乗させてもらひ、家まで送ってもらった。サンキューでした。


5週目

26日(土)----------------------------------------------------------------------------------

大雨。何も聴こえんくらいの。良いねぇ。

この地球上に「海」をもたらしたのは、46億年前のハイパーレイン、といふやつで、これは年間降雨量10m(!)といふシロモノ。日本の年間降雨量平均が1500mm〜2000mmらしひから、これは控えめに云って、空から滝が落ちて来るやうなものだな。この大雨が1000年の間続いたのださうな。1000年!。まぁそらぁ海も出来らぁな、といふかんぢである。

けふの雨もなかなか大したシロモノだった。歩いて3分くらいのスーパーに行ったのだが、傘をさしててもびしゃびしゃ。同じやうにびしゃびしゃの買い物客と並んで買い物す。フと覗けば「つつ井食堂」は満員。雨の日はみなさん外食のやうで。

27日(日)-----------------------------------------------------------------------------------

けふは楽しみにしてゐた、無国籍音楽団「祈り部」とのライヴだ。

よぅく思ひ出してみたら、祈り部とは2004年、彼らがまだ結成間もない頃、同じステージに立った事があるのだ。結構デカいイベントだったな。あの時も「意識の高い若者達だ」といふ印象を持ち、以来づッと気になってゐた存在。今やフミノちゃんやナベちゃんとは、すっかり顔馴染みだ。今回、ゲストと云ふ形で一緒に演れてたいへん嬉しい。

祈り部は、フミノちゃんのヴィオロン、ナベちゃんのベース、カオリちゃんの打楽器が、バンドサウンド、と云ふよりは「三重奏」のやうなイメージを持って音楽になる、他にあまりないタイプのバンドだ。昔は鍵盤や他の打楽器奏者もゐたが、ワシ個人的には3人になってからの方が、断然良いと思ふ。そこにワシが参加する訳だ。気合いも入る。

会場のJIVEは大入り満員。このバンドの人気の高さを伺わせる。

ワシは弐部の全編に参加。ベースは勿論ヴォイスにジェムベに、と演れる事は皆やらしてもらった。フミノちゃんもナベちゃんもカヲリちゃんも、ものすげぇ楽しさうに演ってくれた。お客さんにも大いにウケて満足。イベントとしても大成功だったやうで、彼らの世界をうまく彩る事が出来たのなら嬉しい。このセッションの為に書き上げた「エトゥ・オロ・プ」の出来も、けふが一番。フミノちゃんは暗譜もしてくれてたなぁ。

いや〜オモロかった。良いイベントに出させてくれてありがとうね。

打ち上げは中華料理、といふのも彼ららしい。酒を呑むメンバーが居らぬので、打ち上げといふよりは「食事会」と云ったかんぢ。まぁワシと、もう1人のゲスト平野くん(マンドリン)とでビールは頂いたが・・・。

「また一緒に演らう!」と約束して解散。良いライヴだった。良い壱日だった。

28日(月)-----------------------------------------------------------------------------------

雨の上がった隙を突いてチャリで通勤。しかし此所数日、壱日の中で激しく天候が変わる。洗濯物が乾かず、バッドなスメルを放ってやがる。ヌ〜〜、もっと光を!。

先週アップした日誌に書いたダンス企画「舞」。日誌を読んだ識者から早速反応があり『やりましょう!』と。たいへん有難い。なんとなーく考えてゐた事に過ぎないのだが、どうやら実現に向けて話が流れて行きさうである。よぅし、演りますか、企画「舞」。曲作るぞー。

ちなみにワシはこれまで、学生時代のしょーもないのを入れると4桁に迫る数の曲を作ってゐる。それでも自分の業務のなかに「作曲家」といふ文字を入れぬのは、請われて作る事があまりない、てのがあるからだ。それになにより、昨今「作曲家」と云ふのは、トラックを作るまでが出来るひと、を指すやうなので。それってヘンだね。

29日(火)-----------------------------------------------------------------------------------

けふと明日で、しーなさんは韓国に行ってるらしひ。何をしに行ったのかは不明。本場のマッコリ、呑みたいねぇ。韓国・・・ホンマに近い隣の国で、今や北海道より安く行けると聞く。イミグレに慣れる練習のつもりで、気軽に行きゃあ良いんだよなぁ。それこそマッコリ呑む為だけ、とかね。

曲を創作せんと机に向かふ。壱時間粘ってみたが浮かんで来ぬので買い物に行く。晩飯の材料のツイデに中古激安DVD(¥250)「デイ・アフター・トゥモロゥ」を買って来て、見る。無益な壱日のやうだが、まぁ、ね。

30日(水)-----------------------------------------------------------------------------------

英国の名ロックバンドキンクス、その初代ベーシストだったピート・クェイフが6/25に亡くなった、のださう。

経歴を読むと、仲間内のギター合戦で負けてベースに転向した。とか、クリエイティヴな作業にはまったく関わらせてもらえんかった。とか、そして何より、交通事故でキンクスを脱退、以降、組んだバンドも全く鳴かず飛ばず。そのまま音楽業界から引退、といふ、まぁ不運のサンプルのやうな・・・。勿論、本人がどー思ってたかは知る由もないが。

「生き方なんか自由に選べる」なんてのぁ、多分嘘だな。


7月へ