3月


1週目(ツアー記)

1日(土)--------------------------------------------------------------------

8:00、しーなさんが車で迎えに来てくれる。高速に乗りひたすら北上。案外速く大阪まで着いたが、一般道に降りた瞬間に迷ふ。カンと、読めない地図を頼りに、それでもなんとか予定時間前にけふの会場のネイヴに到着。まだ誰も来てへん。

けふのライヴは地下室の会ライヴパーティーin大阪。ワシにはお馴染みの泉尚也さんが仕切りのイベントだ。機材を下ろしたりしてゐるうちに泉さん、東京から今沢カゲロウ君などが到着。ワシらがリハのトップバッター。考えてみればしーシュで「ライヴハウス」に出るのって初めてだ。へ〜〜〜〜。しかもワシは、「地下室」にソロ以外で出演するのも、これが初めて。へ〜〜〜〜〜〜〜〜っ。

リハを終え、予約したホテルに向かう時にまた迷ふ。心斎橋の路地と云ふ路地をすべて廻った挙げ句、ようやく目的のホテルを見つけた。いつものワシのデラシネ旅では、長堀のカプセルホテルを利用するのだが、今回はしーなさん連れなので女性も泊れるのを探した所、心斎橋はアメリカ村のど真ん中に、結構安いのを発見した。チェックインしてみると、か〜なり良いぢゃねーか。ものすご広い。

そいから地元のお好み焼き屋で本場モダン焼き(美味)を喰ひ、ネイヴまでは電車で行く。知らない町で電車に乗るのは、たいへん好きだ。ふた駅でネイヴのある南堀江に着。もう出演者の皆さん揃ってゐる。なんと東京から、会長の富倉さんがいらしてゐる。こないだ広島で対バンしたばかりのBARAKAも居る。他の出演者ももう既に顔見知りなので、緊張もほとんど無い。定刻でライヴがスタート。

そうそうたるメンツに混じって、ワシらしーシュは2番手。カゲロウくんがワシの事を『土から生まれたベース弾き』と紹介(地下室〜ライヴはいつもメンバー間でお互いを紹介しあう)。たいへん気に入った。使わせてもらお。ライヴはいつものユルいかんぢで。たぁ云ふてもしーなさんにとっては初めての『完全アウェー』。意外に割と気負っちゃう人なのでちょっと心配したが、まぁ見事大役を務められた。ウケも良い。CDも結構売れたみたい。

全バンド演奏時間をきっちり遵守し、見事に終演。ワシらは一旦ホテルに荷物を預けてから打ち上げに参加。この打ち上げがまた楽しかった。この集団、割と皆真面目で、機材や奏法などの話で盛り上がる事が多いのだが、けふは何故か「健康管理」の話題で盛り上がった。みんなそんなに若くないから、かな?。

2:00頃終了。ホテルまで歩いて帰る。ホテルの前はクラブで、大音量がドガドガ表まで漏れてゐるが、ホテル内は静か。ラウンヂで少しだけしーなさんと話をしてから、寝る。

2日(日)--------------------------------------------------------------------

やはりここでも朝っぱらからケータイを鳴らす阿呆がゐて、8:00前に目が覚める。しーなさんはもっとひどく、女性のカプセルフロアには、夜中に集団写真を撮ってゐた輩がゐたらしひ。お前ら皆公共マナーと云ふモノを知らんのか!?。

10:00には名古屋へ向けて出発。高速を東に向かうだけなのに何故か迷う。なんでもワシらは、2月23日に開通したばかりのルートを選んでしまったらしく、どーりで皆の云ふ事が良く分からんかった訳だ。あともう少しで「静岡」まで行ってしまふところだった。

まぁなんとか名古屋市内に到着。今夜はソロである。会場はデラシネ旅の「原点」でもあるリトルビレッヂ。ここで演るのももう5回めだ。永らくカウンターだけのお店だったが、このたび改装して広くなった。マスターの谷口幸至朗さん、本当は広くなったお店での最初のライヴ、として演って欲しかったんだが、機材などがあと一歩間に合わなかった、とのこと。そして、いつもの場所(位置)で演るライヴとしては、最後のヒト、になるらしい。どちらにしても光栄な話しである。

その幸至朗さん、店員のヒロミちゃん、そして名古屋サポーターの鎌田麻実、さらに前回までにワシを見て気に入ってくれたお客さん達、がいっぱい新規のお客さんを呼んでくれた。広くなった(前の3倍)お店が、なんと満員!。ありがたい。ホンマにありがたい。

感謝の気持ちを込めて即興をスタート。徐々に徐々にアゲて行きながら、45分ステージを2回。いつもは地元のミュージシャンとのセッションなどを挿んでゐたが、けふは途中にしーシュを紹介がてら2曲演った以外は、ホンマにソロで最後まで。新曲もいっぱい演った。満場の拍手とアンコールを頂いて、最後は「坂に続く路の手前で」。またしても名古屋のソロを成功に終える事が出来た。ありがとう。ホンマにありがとう。

けふはお客として見てくれてゐたしーなさんが、ソロがまたひとつ上の次元に行ったやうな気がする、と云ふてくれた。確かに、此所数回のソロには迷いがない。それがリトルビレッヂでも演れた事が、また嬉しい。最後にもう一度、ありがとう。

3日(月)-----------------------------------------------------------------------------

しーなさん用に、と新たに開拓した女性も泊れるカプセル名古屋版、が素晴らしく寝心地良く、起きたら10:00過ぎ!。やっべぇえ!!と部屋を飛び出しばたばたと着替えをしてゐたら、『12:00まで居て良いらしいよ〜』としーなさんからメール。普通、10:00を過ぎると追い出される所がほとんどなのに、いや〜〜更に素晴らしい。次から独りで来ても此所に泊まらう。

けふはしーシュでの名古屋デヴーライヴ。日中はヒマなので観光。まづ、目に着いた定食屋に入って味噌煮込みうどん。こ・れ・が・大当たり。うめぇ〜〜〜!。車を放置して名古屋駅まで行き、ミッドランドスクェアの42階、スカイプロムナードに行く。高所恐怖症のワシがビビるのを楽しみにしてゐたしーなさんだが、思いのほか大丈夫だったので、ワシも驚いた。やはりバンヂージャンプ以降、割と平気になって来てゐるやうだ。その後パーラーで昼ビールを飲んだり、で・・・・。

さて本日の会場アルマジロ、は初めての場所。当然、迷う。もうこの二人が『地図の読めない』人種である事は、疑いようがない。てゆーか、やっぱ車でモノ探すのって苦手だわ。

迷ったせいで会場入りに遅刻。慌ててリハをやる。対バンのてらしましんご君には、なんとか迷惑をかけずに済んだ。てらしま君は以前のデラシネ旅で出会った若者。初対面で『アレア(イタリアのプログレバンド)が好き』といふ共通点から話が盛り上がり、いつか一緒に、と云ってゐた人物だ。独特のチューニングと奏法から生み出される、異国情緒のあるギターと唄がカッコいい。

ウチらはいつも通りに。最初、ちょいと固いかな?とも思ったが、曲が進むにつれて会場もほぐれた。「ペンギンカフェ〜」では、お客さんのシルエットがスウィングビートに合わせて見事にそろって揺れてゐるのが見えて、楽しい。リトルビレッヂの幸至朗さんとヒロミちゃんは、けふはお客さんとして来てくれてゐた。ヒロミちゃんは最前列で見事に寝てゐた(笑)。此所数日、店の改装とワシのライヴの為に走り回ってくれてゐたに違いない。本人は寝てしまった事をたいへん気にしてゐたが、ワシはライヴで寝てもらえる事ほど嬉しい事はない。ありがとう。

このやうに、多くの人々の支えと協力により、しーシュ初のツアーは、ひとまづ無事に終了した。皆さん、ホンマにありがとう。

さぁ、今日中に広島に向けて出発だ。

4日(火)-----------------------------------------------------------------------------

日付けが替わる頃高速に乗り、ひたすら西へ向かう。眠気覚ましに尻取りをしたり唄を唄ったりしたが、一番眠気が飛んだのが『ひとりオペラ座の夜』。これは中学生のワシが、授業中のヒマを潰す為にやってゐた遊びで、クゥイーンの「オペラ座の夜」を最初から最後まで再現して唄う、といふモノ。久しぶりにやってみたが、歌詞までほとんど憶えてゐて、自分でも驚く。しーなさんは腹が痛くなるほど笑い転げた。

が、さすがに吉備くらいまで来て(5:00ぐらい?)二人の集中力が萎え、SAで1時間ほど仮眠。広島の我が家に着いたのは8:00だった。昼まで寝て、夕方からは通常通りに仕事。会計係、として、このツアーでの終始決算を出しておく。ギャラを入れるとトントンだが、売り上げだけなら千円単位の赤字。ワシの最初のソロツアーではギャラを入れても万単位の赤字(確か3万とか、そんな・・・)が出たのだから、これはまぁ成功と云へるだらう。

独り旅の方が気が楽、とかいぢわるな事を書いたり云ったりしたが、本当は、道連れがゐる、といふことに、やはり今回かなり気が安らいだ。しーなさん、お疲れさま&ありがとう。

5日(水)-----------------------------------------------------------------------------

昨日よりしんどい。疲れはあとに出て来るんだねぇ。しんどいついでに確定申告を仕上げる。去年まで、税金の計算方法を間違ってゐた事に気付く。しかもこっちが損をする方に!!。嗚呼もったいなや!。しかし年々総収入が減ってゐるねぇ。どーすんでせうね、ワシ?。

女房にそれを云ふと『食えるンならえぇんぢゃないの?』と。

最近、TOTOのTVCMで、なんかウッドベースがすごい効果的に使われてゐるのがあって気になってゐた。曲自体は「カルメン」のやうに聴こえるんだが・・・。調べてみたら、演奏はあの渡辺等氏。ど〜りで!!。曲はやっぱりカルメンの「ハバネラ」で、編曲は瀬川英史。すごいねぇ。この辺の人等がCMに普通に関わってるんだねぇ。

6日(木)-----------------------------------------------------------------------------

遅ればせながら、こないだのぱかぱかシュウ号のライヴの映像と音を聴いた。爆笑である。観客が完璧にあっけにとられてゐる。ドラムなしでもロックは出来る!といふのの証明のやうなライヴだな。チェンバー・ロックてやつか?。これがまたステージ上で、変ななれ合いのやうな事をやってないのが良い。観客にも、内輪にもひたすら不親切で冷淡。これがこの異様な出し物を成功させた要因だらうな。また演りたいなぁこの編成。

どうもこの辺りから、ソロへの迷いが吹っ切れて来たかんぢがする。ソロの、ではなくコラボのパフォーマンスで、ソロへの迷いがなくなった、と云ふのもおかしげに思ふ向きもあらうが、事実さうなのだ。今後、さういふ些細な事にこだわらず、ソロにも、ユニットにも、向き合えさうである。

7日(金)-----------------------------------------------------------------------------

トミ藤山さんの来広を明日に控え、オーガナイザーのみゆきさんから、此所数日しょっちゅうメールや電話が入って来る。彼女も色々と不安なのだらう。ワシも、ジャンルこそ違えど敬愛する大先輩でもあり、ライヴにも足を運んでくれ、我が家に立ち寄ってくれた事もある友人として、トミさんに良い広島の思ひ出を作って頂きたい。ライヴが無事、成功しますやうに。

ダニエル・シェルのCDが尼存から届く。期待したトライバルな雰囲気があるのは一部だけで、全体的には「チャップマン・スティックをフィーチャーした室内楽」てかんぢ。ちょいと肩透かし。それでも、スティックでラーガのやうなのを弾いたり、かなりツボな女性のヴォイスをフィーチャーした曲とかもあって、まぁこれはこれで良い作品かな、と。


2週目

8日(土)--------------------------------------------------------------------

トミ藤山来広。バックを務めるはしーなさん、カシラ、みゆきさん、にワシ。オーガナイザーのみゆきさんから、5分刻みのタイムスケヂュールが送られて来て、メンバー一同おののく。まづはスタヂヲ入り。トミさん、来るなり速射砲のやうなトークを炸裂させる(笑)。そのマシンガン・トークの合間を縫ってビシビシとバンドメンバーに指示を飛ばし、リハを仕切る。以前拝見した時も感動したが、そのギターの腕前鮮やかなことよ!。御歳68歳!。すごいなぁ、このパワー。

この面子の中では一番親交の深いワシが、いつの間にかバンマスの大役を仰せつかってゐて、まぁ、そんなかんぢ。

なんとか15曲を仕上げ、メシを喰って、会場入り。けふの会場は「クレメンタイン」。マスターの川手さんとは古くからの懇意だが、純然たるカントリィミュージックのお店なので、音楽的な接点はほとんど無い。ワシはこの店のステージに立つのも初めてだ。トミさんの唄を聴こうと詰め掛けたお客さんで、ハコはぎちぎちの満員。ステージもぎちぎちで、しーなさんとほとんどくっつくやうにして演る。

さてトミさん、打ち合わせにない事をばんばん仕掛けて来て大層焦るが、それこそがワシの本領発揮。逆にトミさんを仕切る気でガンガン行く。トミさんの唄とベースだけでブルース演ったりもした。お客さんも大ウケ。ワシ自身もノーミス、とは行かんかったが、まぁ良い出来だった。自慢するが、他のベーシストぢゃあ、けふのステージは勤まらんかったと思ふよ。

あんだけのステージをやって(50分×2本。その間唄いっぱなしの喋りっぱなし)、『軽く飲みに行こうよ』といふトミさんに断わりを入れて、けふの処は帰る。

9日(日)--------------------------------------------------------------------

けふはダブルヘッダー。まづ広大跡地にて、お馴染み千田わっしょい祭りにFar eastで出演す。1時間くらい演って、出来も良かったが、何よりここは演ってて気持ちが良いのだね。屋台のたこ焼き喰ってビールも飲んで、えぇかんぢ。終演後もしばし寛ぐ。

雨が降り出したが、ワシらはそのまま土橋のカポネに入る。トミ藤山広島公演の2日目だ。けふはツンちゃんも入り、他にゲストも入る大所帯。昨日はお店柄、カントリィが中心だったが、けふは割とジャズナンバーを演るラインナップ。昨日に引き続きバンマスを仰せつかり、ツンちゃんやゲストに指示を出しながらの。ツンちゃん、流石の対応力。ブレークの合図を出そうと思ふと、ちゃんと目が合う。お互い、野生の勘やね。

昨日よりメンバーも多いし、普通はきっちりサポートに徹するのがベーシストの役割なのだらうが、ワシにはそんな常識はない。「任された」と云ふ事は「好きに演れ」といふ事だ!!。双頭バンドのつもりで、更にガンガン行く。トミさんも、昨日よりも更にガンガンと、唄もトークもギターも冴え渡る。すごいおばさまだよ全く・・・。

ミュージシャンシップといふものを、身を持って教えられた感あり。素晴らしい経験だった。トミさんの弟子でもある東京の久保田涼子から『トミさんは信頼しない人には指示を出さない』と聞いてゐた。それを、ここまでバックの仕切りを任された、と云ふ事は、光栄に思ふ。ありがとう「巨匠」トミ藤山!。お疲れ様でした。

しかし、あの『何が起きるか分からん』感での本番2日は、さすがに疲れた。1年分の仕事を2日で演ったやうなかんぢ。しーなさんとの連繋が上手く行ったからこそ出来た仕事だった。しーなさんもお疲れさま。打ち上げでは、二人とも疲れ過ぎてちょっと『オカシく』なってゐた(笑)。

10日(月)-----------------------------------------------------------------------------

元「たま」の知久寿焼氏のソロのライヴを見にOTISに行く。開場の5分前には既に行列が出来てゐる。うぅむ、一度はメヂャーで活動する、といふ事の事実を垣間見る気がす。それを差し引いても知久氏の活動基盤の広さは、メヂャーもインディーズも超越した処にある。開演前からCDやDVDがばんばん売れてゐる。今はおそらく自主レーベルでの活動なのだらうが、この売り上げとチャーヂバックだけで、充分稼げてゐるだらうな、などとイヤらしい事を考える。

そのライヴも素晴らしい。ギターとウクレレの弾き語りのみ。特に盛り上げるMCもなく、曲名を云っては演奏する、といふシムプルなライヴ。しかし、あの独特の歌声で淡々と切々と歌い上げる世界観は、圧巻。ギターもぢつは超絶的に上手いが、なんと云っても曲が良い。2時間とちょっと、まったく飽きることなく聴かせてくれた。うーむ、やるなぁ。同い年。

その後、友人である大阪のカメラマンA氏が、撮影で広島に来てゐるのと、女房とで飲みに行く。A氏はオーロラや砂漠の撮影を専門とする自然派カメラマン。A氏が次回に作らうとしてゐるフォトDVDの音楽を、ワシに担当してほしい旨、とか聞き、スタートレックの話やらで盛り上がった。

11日(火)-----------------------------------------------------------------------------

昨年のメキシコBaja Prog Fes に出演したKBBの壺井君から、オフショットのビデヲを借りて見てゐる。「どんな感じのツアーになるかの参考」の為なのだが、見れば見るほど『見知らぬ国のすごいイベント』で、ホンマにこれにワシら出んの?といふかんぢ。楽しみでもあるが、正直、怖くもある。それにやっぱり、楽器が心配。まぁ仕方ない。もう出演は決まってる訳だし。ハラを括るしかないね。

許可が出たので、売れるか売れんかはさておき、ワシの「きねつき」も持ってって販売するつもり。あえて『国際仕様』とか、英語のパンフなどは作らずに、日本で売ってるやつをそのまま売る。歌詞は全部日本語だし。そもそも「不知火」とか「彼岸へ」とか「此岸之朱」とか「きねつき」とか英訳のしようがないしね(笑)。

さういや旅音楽仲間である藤山ヤモリ氏の参加してゐるPlastic modeは、結構前から海外でツアーを重ねてゐる。CDのジャケこそ国際仕様だが、ライヴは全部日本語の歌詞で演ってるんださうだ。天晴!。

12日(水)-----------------------------------------------------------------------------

今年の始めに作るつもりでゐたが、結局意欲が沸かずに流れたワシのソロの新作の構想が、昨日あたりからフイに固まって来た。内容はまだナイショにしておくが、春ツアーを終えた辺りから作業に入らうか、と考へる。んで、夏の終わり頃には完成さして、秋のツアーはそれのレコ発とす。計画だけは完璧だ。よぅし。

メキシコで初演するキキオンの新曲に悩む。ギターのリフは6/8で進行するが、唄は9/4と5/4がランダムに混ざり、これのどちらにも着かないベースラインを、との注文。づっとMDで聴き続けてゐるのだが、未だに唄の拍が理解できない。これ、よく唄えるなぁ十時さん・・・。2回分のリハが録音されてゐて、どちらも同じやうに唄ってはるから、彼女は決して当てずっぽうに唄ってゐる訳ぢゃない(当たり前か)。てぇ事は十時さんの中には、ちゃんとパルスが流れてゐる、と云ふ事で・・・。

恐ろしい人達やな、キキオンて・・・。

13日(木)-----------------------------------------------------------------------------

新作CDに参加してほしいミュージシャンと録音技師に早速オファー。まぁ具体的な日程を出した訳ぢゃないが、参加してくれる旨を確認す。

引き続き例のキキオン新曲の練習。駄目。どーしても拍が取れない。大体の変拍子やポリリズムは演って来たつもりだが、これは未知のリズムだ。本人と何度か合わせて行けば理解できるのかもしれんが、現時点ではワシの手に負える代物ではない、と気付く。間違いなく、これまでの人生で聴いた曲のなかで最も難解。

ライヴ前日のたった1回のリハで理解できるかどーか。そこに賭けるしかあるまい。

14日(金)-----------------------------------------------------------------------------

シネツインにペルセポリス、といふ映画を見に行く。イラン人監督によるアニメーション映画だ。以前、なんかで予告編を見てオモロさうだ、と思ってゐて、上映してるって知った時にはけふが最終日だった。混迷期のイランを舞台に、おそらくは監督の実体験であらう様々なエピソードが、主人公のモノローグの形で進められて行く。

昨今、魚やら蜂やら鼠やらペンギンやらを主人公にした、やたらリアルな・・・てゆーかなんてぇのか、主人公が動物になっただけでその実結構グロいほどのただの青春映画だったりする動きやら描写やらだけがやたらリアルででも魚やら蜂やら鼠やらが人間の言葉を喋ったり仲間同士で助け合ったりでもなんで鼠が料理してペンギンにダンスのといふやうな、ワシから見れば相当にユガンだ感覚のアニメーション映画が流行ってゐて、はっきり云ってウザくてかなわん。

しかしこのペルセポリスは、今どき見られないやうなシムプルな動画でしかしぢつは手が込んでゐる、といふ芸術性のレベルの違いを見せつける傑作であった。も1回見たいなぁ。

投球版図でフライトケースに入れる為の緩衝材を買って歩いてゐたら、ギタリストのMにばったり会う。『何処行くンすか?』と問ふので、ワシは今買って来た緩衝材の事がアタマにあるンで『メキシコへ』と云ふと、Mとしては「今から何処に行くのか」訊ねた訳で『はぁ?』といふ事になり、通りのど真ん中でお互い笑い転げた。


3週目

15日(土)--------------------------------------------------------------------

週例、といふ割にここん処休みの多かったしーシュリハ。けふは初めてベースセロを全面的に使ってみた。演奏姿勢さえ確保できれば、スラップバリバリ、みたいな曲以外はこれでイケる。ただ、演奏姿勢がこれほど難しい楽器もそうないのでは?。改善点は其処だけ。色々やってみやう。

リハ後ふたりでライヴを見に行く。ビッキーこと倍音's尾引浩志&民族打楽器叩き語りストヤマザキヤマトによる「ヤマト&ビッキー」。尾引さんは去年の9月に広島で共演して以来。相変わらずの見事なホーメィと口琴、馬頭琴。アルファ波出まくりのライヴだ。ヤマトさんは初めてお見受けしたが、ジェムベ、パンディロ、ビリンバゥ、ハング、などを叩きながら、野太い美声で歌い上げる、なんか勝手にシンパシィを抱いてしまふやうなミュージシャン。この唄がまた良いんだなぁ。

かういふ、思わず「一緒に演りたいなぁ」と思はしむるミュージシャンと出会えるのは、人生のヨロコビのひとつであるな。ちなみに、リズマ・クノムバスの相棒、くどうげんたさんは、さう思ったらとりあへず声をかけてセッションに誘うさうだ。その為に、自分の演奏が入った音源をいつも持ち歩いてゐるらしひ。さう云へばワシとの出会いもそんなかんぢだった。ゲンタさん曰く『音楽的ナンパ』ださうで。見習いたいね。

16日(日)--------------------------------------------------------------------

女房と昼飯喰ひに行くがてら少しドライヴ。すっかり日射しが温くなって来たな。旅の季節だ。

今週末から、いよいよ初の海外公演を含む春のツアーが始まっちゃう訳なのだが、メキシコはさて置き、江戸のライヴはこのたびかなり余裕を持って組んでゐる。てゆーのも「時差ぼけ」といふのを、おそらく初めて経験するからで、これは全く未知の世界。どんなもんなのか想像もつかぬ。想像のつかぬモノにはし過ぎるくらいの用心を、といふのは旅の基本なので、出発前の壮行会ライヴを含めても3本しか演らない。

滞在は2週間と少しだから、その間は時差ぼけとは云へヒマになる。ので、今回は割とあちこち遊びに行ってみやう、と思ってゐる。都電荒川線一周の旅、とか、深大寺蕎麦めぐりの旅、とか、あ、ブルーマン・ショウも見に行くのだ。かえって疲れたりしてね(笑)。

17日(月)-----------------------------------------------------------------------------

銀行に行って年貢の収納、郵便局で新秘密兵器(楽器)の金額振り込み、ヤマト運輸に寄ってハードケースの運送依頼、ハンバーグの材料の買い物。

そいから旅の準備。たぁ云へいつものツアーの装備と変わらぬ。Tシャーツ×4、ステージ衣装×2、下着靴下それぞれ×4づつ、タヲル×4、物販用のCD×30、常備薬、ハンケチ、ポケットティッシュ、洗面道具、その他適宜。これにまぁ旅券と幾らかの現金。『カバン1個で行くのか?!』と先日問はれ、『え?マズイ?』とか思って少し狼狽えたが、う〜む、どう考えても他に要る物が思い浮かばぬ。ジャンパー、フリース、ジーパンは多分着っぱなしだし・・・。まぁ予備のシャーツ1枚くらい入れとくか。

飛行機の中で読む本を見繕っておこうか、と思って本屋に寄るもこれと云ったモノなし。インドに行った時は、関空のキヲスクでとっさに村上春樹を買ったのだった。カジュラホのホテルで、TVからは英語の「Xファイル」が流れ、いまワシはインドのホテルでアメリカのドラマを見ながら村上春樹を読んでゐるのだ、と不思議に思ったのを憶えてゐる。

18日(火)-----------------------------------------------------------------------------

最近、カジカの鳴き声の低いののやうな鼾をかいてゐるらしひ。その声に自分で目が覚める事もあり。

映画「ブラックレイン」を見る。主人公が異国の地で、といふ設定が、今ポイント。言葉の通じない場所、だと思って『英語が分かるやつなんか居るのかよ?(Is there the guy who can fucking English?)』と独りごちる主人公に、高倉健が自己紹介のあとに『and I do speak fucking English』と答えるシーンが良い。字幕見るだけぢゃ分からんジョークだなぁ。ましてや「吹き替え」では・・・。

個人的には、映画館での映画鑑賞に於いては、やはり作られた国の言葉で「聴く」べきだ、と思ふ。字幕を読みながら映画を楽しむには、確かにある程度の熟練が必要だが、それぐらい熟練せぇよ、と思ふ。ましてやおかしげな新人の歌手や俳優に声優の真似事なんかさせるな。映画が台無しになってんの分からんのか、ジブリ。

19日(水)-----------------------------------------------------------------------------

けふはSoe'sのリハをする予定だったが、メンバーが二人来れんのでナシにした。空いた時間で、メキシコ行きの飛行機の中で聴きたいCDをMDに落とす。今時はみんなこんな作業はアイポッドとか云ふので簡単にやるンだらうが・・・。それにしても成田〜サンフランシスコだけでも8時間のフライトぢゃげな。何すんでしょうね?。夕方日本を出発して、その日の朝にアメリカに着く。??。8時間移動して時間は増える。????。仕組みがよう分からん。

夜は女房が友達と飲みに出たので、ワシは独りの夜を満喫す。『広島ごはん沼田食堂』といふ定食屋で独り飯。古本屋でのんびり1時間立ち読み。つまみと酒を買って帰り、アニメ「人魚の森(古い!)」を見ながらちーびちび。

20日(木)-----------------------------------------------------------------------------

祝日。ヲーキングしてゐると謎の男が話しかけて来た。中国系カナダ人のバックパッカーだった。カタコトの英語とカタコトの日本語で会話してみるに、ヒッチハイクで大阪を目指してゐる、と云ふ。車が拾いやすい道路を教えてくれ、といふので、幹線道路まで案内しながら色々話す。「仕事は何だ?」と問はれ「音楽家だ」と答えると、「Hm〜、It's difficult life」と云ふ。名前を聞き、握手をして、「I hope your Success」と別れる。向こうも「お前のメキシコでの成功を祈ってゐる」みたいな事を云ふてくれて、良い気分。さて彼はホンマに大阪行きの車を拾えたんだらうか?。

女房の希望で「広島平和記念資料館」へ行く。他所の土地から来たミュージシャン仲間には、なるべく此所を訪れて欲しい、と伝えてはゐるのだが、ワシも何十年ぶりか。新館が出来てから行くのは初めてだ。入館料¥50(!)を払って観覧。

旧館は、原爆の恐ろしさ-----その威力や被害や脅威について----を多く語らうとしてゐるやうに見受けるが、新館の方は、そのテーマを踏まえつつ『では今から我々はどうすべきか?』と云ふ提起を前面に押し出してゐるやうに思へる。云ひ方は悪いが「ポップ」な印象。祝日、と云ふこともあらうが、館内は様々な国からの来訪者であふれてゐた。子供から大人まで、ヨーロッパ系から東南アジア、中東系の人達も居たやうだ。流石に、休憩室などでベンチに座ってゐる人達の顔つきは、暗い。それでいいのだ。

2時間半かけて全展示物を見て廻った。沢山感じた。この気持ちを持って、東京へ、そしてメキシコへ、行く。

21日(金)-----------------------------------------------------------------------------

昨日日中町中を歩いたせいか、寝起きから花粉症が大変な事になってゐる。夜中に掻きむしったらしく、まぶたが腫れてしまって目が開かん。鏡を見ると人相が変わってしまってゐる。当然、鼻も大変な事になってゐる。今までの人生では、結婚した年の結婚した日が一番酷い症状だったが、あれと同じくらい酷い。で、けふは13回めの結婚記念日。やっぱりこの時期は酷くなるのかね?。

しかしツアー前最後の日とあってはぢっとしても居られぬ。東京からの帰りのバスチケットを受け取りに行く。なんかペラッペラのレシートみてぇな紙っきれ。薬局に寄ってマスクや除菌シートなど購入。これで旅券を確認すれば、旅の準備は完了。メキシコ行きに対して、何人かの友人から激励メールや電話などが入る。ありがたいね。

小学校の卒業文集の中で『将来の夢』って処に「仲間とロックバンドを組んで海外で演奏する」と書いた。あれから30年、いよいよその夢を叶える事が出来るやうだ。あのとき「ザ・グースエッグス」の名前でワシと一緒にバンドをやった5人の仲間達。SとHとGとMとS。みんな何処で何してるんだらう?。

てな訳で、行って来ます。無事に帰って来たら、次回更新は4月12日の予定です。PCがある所からは掲示板に日々のアレを書きこんで行こうと思ってますが・・・。


4月へ