夏のお江戸ツアー2009

*沢山の友人知人ファンの方が我らのツアーに駆け付けてくれました。日記に名前を上げてお礼を述べたい所ですが、ひとりでも書き漏らすと嫌なので、ひとりも書かない事にします。ご了承下さい。この場を借りて、ありがとう。


8月18日(火)三軒茶屋グレープフルーツムーン

しーシュ2度目の江戸ツアーを含む、夏のツアーが始まる。ツアー中はだいたいバラバラに行動する我々だが、今回は経費を使って新幹線切符をゲット。二人揃って、割とリッチに江戸入りを果たす。

わずか4時間弱。昼過ぎには東京駅に着。早いもんだ(と思ふやうになった)。そのまま三軒茶屋はグレープフルーツムーンに直行。電車で来るのは久しぶりなんだが、憶えてるもんだねぇ。しーなさんは東京のこの辺は初めてらしく、商店街などに興味津々。

既に会場入りしてセッティング準備してゐたけふのゲスト、パーカスのくどうげんた氏と合流。軽くリハ。ゲンタさんとしーシュで演るのは、昨年夏以来。軽くリハするが、なんか合わせ辛いな。ゲンタさん、さらにリズムが重くなってるな。

グレフルは対バン形式のライヴが多い。けふは割とアクースティック系の出演者ばかりの様子。我らは4バンド中の3番手。気さくに話しかけて来てくれる対バンの人達と、楽屋で交流しながら出番を待つ。一個前の対バン、美友記ちゃんが、岡本綾にチョイ似でカワイイ。

さてワシら。例によって「毬藻〜」からスタート。前半をしーなさんのソロ、2番以降でワシが入り、二曲目の中程からゲンタさんが入って来る、といふ「加算方式」でライヴを展開。ゲンタさんの重いリズムに戸惑ひつつも、まぁなんとか良いライヴを演る事が出来た。満員御礼とはいかぬまでも、まづまづの動員。何よりも一曲終わるごとに大きくなって行く拍手が、手応えを感じさせてくれた。

ひとまづ、初日成功。定宿、吉祥寺は久保田涼子宅に泊。


8月19日(水)荻窪ベルベットサン

夏の東京の暑さはやはり広島のそれとだいぶ質が違う。よぉく思ひ出してみたら、この暑さが身に堪えるやうになって来たから、此所数年は夏の東京ツアーをせぬやうにしたのだった(笑)。昨年は夏の盛りに九州を旅した。あれも暑かったが、やっぱり東京の暑さはちょいと違うねぇ。「重い」暑さ。

昨日のライヴで疲労がさらに上乗せされた感あり。ので、あんまり出歩かぬやうにして、会場入りまで静養してゐる。気がついたら寝てたりするから、やはり疲れてゐるのだ。ユンケルでも呑んどくかなぁ。

しーシュ行動原理に基づき、日中はしーなさんとは別行動。夕方に会場で落ち合う。今年3月に初めて出演した荻窪はベルベットサン。マスターにえらいこと気に入って頂き、その場で次回の出演オファーをもらへた。そのマスターは所用の為本日欠席、といふお気の毒な・・・・。

グランドピアノが置いてある、といふ事はさて置いても、たいへん演り易いお店。よく聴けばえらいこと調律が狂ってるピアノなんだが(笑)、あんまり気にしないで演る。この辺、しーなさんは順応性高くて良い。事実まァ、唄のバックで鳴ってる分には、それほど気にはならぬものなのだ。順調にリハも終え、春の時にも行った中華の店に飯を喰ひに行く。

が、珍しくしーなさんが定食を残してゐる。この人は見かけによらず大食いの速食いで、こんな事はワシが知る限り初めてだ。よほど疲れがキてゐるのだらう。かく云ふワシもハラは減ってゐるが食欲はない、といふ微妙な状態。中枢神経が働かぬうちに胃に詰め込む、といふかんぢでラーメンとチャーハンを呑む。炭水化物だ。燃やせるだけ燃やすのだ。

本番はけっこう沢山の人が見に来てくれて嬉しい。

けふは完全デュオなので、昨日より落ち着いたかんぢで・・・と思っただけで、結局ハゲしく演ってしまった。かうしてみるとウチはけっこうハードなユニットなのだな。途中、喉がヤバくなったりしたが、まぁなんとか。昨日は演らなかったお互いのソロコーナーなども交え、全部で1時間くらい。ふたりとも調子が悪い状態で、ブレない演奏、が出来た事はけふの重要なポイントだ。

今回、たった2日のライヴ行程で、明日はひとり帰らねばならぬしーなさん。お疲れさま。旅は良いでしょ?。貴女の今後の旅も幸多きものであるやうに。


8月20日(木)浅草橋HONEST

けふからはソロの演目となる。寂しいが頑張らねば。

けふの会場Honestは、いつも東京の西で活動するワシの、初めての「下町進出」となる浅草橋。駅をおりると『ここは浅草ではありません』といふ看板があって笑える。多分、間違えて来る人いっぱい居るンだらうな。総武線のガ−ド下、と聞いてゐたイメージとは違って、店構えは結構オシャレなリストランテである。

けふは、この店で月イチ行われてゐる「角辻順子あっとほーむライヴ」といふイベントのゲスト。ワシが初めて自分のバンドを率いて東京に来た時、お客さんのひとりとして来てゐたのが、シンガーソングライターの角辻順子ちゃんだった。独特のバイタリティで屋形船やカフェなどを使った一風変わったライヴ活動を展開してゐる順子ちゃん。共演はこれが5回目くらいになる。

彼女の唄のバックでピアノを弾いた事もある。彼女のお母さんのお店ではワンマンでライヴした。全くの生音でデュオライヴもやった。広島にも来てもらった。そしてまた今回、興味深いイベントに参加させてもらふ。考えてみれば、すごく不思議な縁だ。

普通に食事をしてる人なんかもゐる空間でのライヴ。まづは交互に30分づつ演る。順子ちゃんはバンドで、ワシは全く力まないソロで。後半は一緒に。彼女のバンドのメンバーは、既に顔馴染みの人も多く、気の置けないセッションとなる。嗚呼、不思議だ。初めて来る下町のリストランテで、こんなに安らかに歌えるとは。

名前の通り、アットホームな良いライヴだった。

順子ちゃんのダンナは、ワシの兄貴分バンドであるBARAKAのドラマー平石正樹さん。彼らは今フランスをツアー中。よろしくお伝えしてね、と最終の総武線で吉祥寺へ。


8月21日(金)オフ

ツアー中はオフ日=移動日、となることが多いが、滞在型はそれがないのが利点。ライヴがない日=休憩の日だ。

日中は洗濯など。あまりダラダラしてゐてもかえって疲れるので、吉祥寺を当てもなく果てしなく歩いたりす。お気に入りの漫画家西原理恵子のウチを探すも見つからず。彼女のイラストによる町内会ポスターは見かけた。贅沢な町内会である。

夜は宿主りょーこが高尾山に連れてってくれるといふ。なんでも最近、ここの超展望ビアガーデンなるものが話題らしひ。高尾山と云へば「霊場」ではないのか?。そげなところでビアガーデン、とは随分と不埒な。しかしまぁビールは呑みたいので、行く。

ところが高尾山駅に着いた時点で、既に『ビアガ−デン満席』の電光掲示板が。

それでも上まで登れば展望もすごい、とかなので、ケーブルカーで登る。ビアガーデンは確かにごった返してゐたが、その場を少し離れれば、凛とした空気の張り詰める静寂の空間。薬王院へ続く参道などさすが霊場、肌寒さとは違うナニカがびしびし身体に来る。すごい。ものすごい杉の巨木などもあり、しばし言葉もなく佇む。植物の「気」に弱いしーなさんなら、多分倒れてしまふんぢゃないか?。

約1時間、そんな中を歩く。づーっと鳥肌が立ってゐる。

すごい経験だった。

下界に降りてりょーこと居酒屋へ。驚くほど酒に弱いりょーこはチューハイ半分で撃沈。安上がりな娘である。


8月22日(土)北千住コズミックソウル

夏のお江戸つあー千秋楽は、今年始め、広島〜大阪〜滋賀〜名古屋と一緒に廻った「倍音クレージー」岡山守治とのダブルシュウ。彼と同じく「倍音’s」で名を馳せたヴォイスパフォーマ−、徳久ウィリアム君の紹介で確保したブッキングしてもらったのがコズミックソウルだ。浅草橋と同様、北千住も初めて行く町。

場所が「分かりにくい」と聞いてゐたが、いつもの妙な感覚で歩いてると、割とあっさり会場が見つかる。階下は総菜屋さん。良いかんぢの下町の商店街だ。先入りして挨拶。まだ若いマスターだが、なんとこのお店12年も続いてるんださうだ。自家製パンをお客や出演者に振舞うのが特色ださうで、早速いただく。すげぇ美味いパン!。パン喰ひのワシにはたまらん店だな。

リハをやってゐるとシュウちゃん登場。しばし再会を喜びあう。シュウちゃんは、あの春ツアー以来『唄を聞かせる』といふ事に開眼したらしく、それはワシの影響だ、と云ってくれる。倍音をフィーチャーした彼なりの「ソング」をしかと聴かんとす。元々ワシは彼の「もぐら」といふ唄がすごく好きで、あの路線でヤラれては正直かなわんな、といふ気もしてゐる(笑)。

二人とも初めての場所ではあったが、結構遠くからのお客さんも足を運んでくれた。

春のツアーと同じく、シュウちゃんソロ〜ワシのソロ〜デュオ、と演る。シュウちゃんは自分の倍音に合わせて、ギターを435hzくらいにチューニングする。フレットレスたァ云へ、これに対応するベーシストは、世界広しと云へどもワシぐらいだらう。と云っておこう(笑)。完成度で云ふと春ツアーには及ばなかったが、それでもかなりえぇモノが出来た。

良いライヴだったが、シュウちゃんはなんとなく悩みがあるやうで、帰りの道すがら色んな事を話した。彼のやうに才能も向上心もある若い音楽家に、その未来に、幸多からむことを。そしてワシらにも。


所感

旅の中で音楽を演るやうになって、まだ7年ぐらいだ。

全然、ひよっこである。

それでも、出会う人は、ワシからなにか壮大な「移動の記憶」を感じ取ってくれるやうで、それは「Dance」や「らのえてぃあ」といふ旅の唄を、ことさら印象深く響かせてゐる。だから、今はまだ「旅人」などと呼ばれる事は烏滸がましいのだが、その印象には甘んじる事にしてゐる。今後も旅を続け、その印象に見合うモノになりたい、と思ってゐる。

写真も、メモも、実際に経験する濃密な時間とくらべれば、カスのやうなものだ。旅とは、心の中にしか残り得ないものだ。

そして本来、音楽もさういふモノであるハズなのだ。

ぢゃあ、またね。

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8月後半