週変わりのシュウ

白々しい夜会

生まれ出ずる日々

2月8日(土)

広島に「がんす」といふB級名物あらば、島根には「赤天」といふ名物あり。

いづれも魚のすり身を原料に工夫を凝らした食材であり、また同じ「がんす」「赤天」と名乗っても、微妙に違うものがある、など興味深い。
「魚」として商品にはできぬ「雑魚」や、本来なら「廃棄」する部分を使って、斯様にイキなものを生み出した先人には敬意を表する。

豪勢なご馳走もタマには良いが、旅先ではやはりかういふ『その地でフツーに食されてゐるイキなもの』を食べるがよろしい。それと地元の酒があらば云ふことなし。

2月9日(日)島根県江津市 enjoy speace リエット

しーシュ、久々の島根遠征。

けふの会場がある江津市は、かつて広島と島根を結んでゐた鉄道「三江線」の発着駅だった土地。「乗り鉄」のワシをいたく刺激した路線であった三江線も、廃止されてはや3年。その以前から「もの好き山陰鉄道旅」の中継点でもあった江津は、けっこうあちこち歩き回った記憶がある。

その地に我らを呼んでくれたのは、江津のシンガーソングライター深野良治さん。去年の高宮でのイベントでお会いして以来、熱烈なラヴコールを頂き続けてをり、それが実現した日でもあった。
正直、江津のどこにそんな場所が?と思ってゐた(失礼)が、ちょいと来ぬ間に街は大きく変貌してをり、駅前なんぞすごくオサレになってゐて、立派なリストランテもある。会場のリエットは、まぁだいぶ寂れた場所にあるが(笑)、かなり立派なイベントスペースであった。

『満員にします』と力強く宣言してくれてゐた良治さん。その言葉通り満員の店内。老いも若きも、と云ったかんぢの客層で、良治さんの友人たちがスタッフとして働いてくれてゐるのを見て、やはり日頃いかに誠実なお人なのか、が伺える。

心して良きステージを。

良いライヴだった。
例によってあまりMCを入れずに二部に分け、主力曲を中心にダダっとお届けした。大好評のライヴだったやうで、安堵。スタッフ渾身の宣伝もあり、久々にCDがよく売れた現場でもあった。

また、安芸高田市は高宮の友人らが駆けつけてくれてをり(意外に思ったが、高宮からだと広島市内より江津の方が近いらしい)、これも嬉しかった。しーなさんの旧知の友も集まり、打ち上げも楽しい。珍しく飲んでる最中に「酔い」を意識するほど飲んでしまった。

良き人々と関われてゐる喜びを、歌にせねばならんね。
ありがとうございました。

2月10日(月)

会場近くの宿に泊まれども、夜中になんやすげぇ音がする、と思ってゐたらそは風の音だったやうで、ライヴから一夜明けたけふも強風世界。早々に宿を出て、石見海岸などウロついてみるも、吹っ飛ばされさうな強風にて撤退。朝まだきで開いてる店もなく、飯どころ探してウロつく中年デュオ。

なんとなく「芸北に寄ってみるか」といふ合議となり、高速道路を使わず中国山地を越えて行く。ひと山、ひとトンネルを超えるごとに天候が変わり、芸北近辺では立派な雪景色に。我らがアジト「正直村」に寄らんとしたが、直前まで行ったところで、100%の雪道となり、断念。しかしまァせっかく履いた新品のスタットレスを、ここでよーやく使えたので、これはこれでヨシとす。

夕刻前には広島市内にタッチダウン。
良き週末遠征、弾丸遠征であった。

2月11日(火/祝)

世間では祝日なんぢゃげなが、ワシは普通に仕事。
来週日曜日に、福山で頂いてる仕事のために、シコシコとコピーする壱日。

夜はレッスンに。祝日にてだ〜れもいない教室を開けてフツーにレッスン。
その帰りの足で、明日のライヴに備えて、機材備品を会場のJUGEMUに持って行っておく。

2月12日(水)ソルティ・ベアーズ:ライヴ@JUGEMU

朝はバイトに。
ライヴのある日にバイトを入れてしまって嗚呼、と思ったが、まぁこの辺でさういふミッションを経験しておくのも良からう、と。幸い、あんまり忙しい日ではなく、順当に社会経済に従事した。

バイト先で着替えてからJUGEMUへ。
熊本香織ちゃんを歌姫に擁するクァルテット ソルティ・ベアーズの、晴れて2回目のライヴだ。圧倒的にリハの足りないクァルテットだが、そこはそれ百戦錬磨の達人が揃うバンド。鍵盤のモンゴル松尾、ドラムスの石井聡至、にワシがけっこう全力で弾きまくる上に歌を乗せるかをりチャンも中々のタマである。

その香織ちゃん人気のおかげもあり、JUGEMUは酸欠寸前の超満員。音響のタナベさんの手腕も冴え、ホンマに楽しく気持ちよくライヴに没頭できた。今回はワシが歌う局面も多くあり、まァ当然ながら松尾さん&サトシをバックにベース弾き歌うことの気持ち良さと云ったら!。

けふは客席に、もとWADAバンドで同じ釜の飯を食ったベースの前田順三さん、サックスの岡本亜希子、カメレオン・バンドでの同胞 田辺ゆみこも顔を見せてくれてをり、再会をことほいだ。みんな元気で頑張ってゐて、良い。

今回、香織ちゃんはこの日のためにオリジナルを書き下ろしてをり、これがなかなか良い。前にも演った初めての自作曲もあるし、今年はレコーディングを!とステージで宣言(笑)。そらぁ楽しみやな、と皆で盛り上がった。良き仲間と良き時間を共にできて幸せなことである。

2月13日(木)

以前、『お客さんと一対一の飲食店』といふのをやってみてはどうか?と夢想したことがある。仕事で帰りが遅くなった女房に食べたいものを訊きながら作っては出し、といふのをやった時に思ひついた。

まぁ飲食店経験者から一笑に付された訳だが(まぁさうだよな)、それと同じやうな事を音楽でやれんかな?と思ひたった。多くても5〜6人くらいのお客さんを予約で集め、テーブルを囲んで 聴きたい曲を尋ねながらつらつら弾いて歌ふ、まぁプライヴェート・ライヴだ。
『余白の告白』とかいふタイトルで・・・

しかしよぅよぅ考へたら、そはワシがいつも打ち上げでやってることではないか!と思ひ  またはっぱふみふみ・・・。

2月14日(金)

こないだワシらが見た 大阪は京セラドームのQueenのコンサートのダイヂェストのやうな映像がYou tubeにアップされてゐた。まぁホンマにダイヂェストなのだがうまく編集されてゐて、感動が蘇る。
ワシん所からは聴こえなんだ音やら、見えなんだ動きとかもちゃんと映像になってゐて、まぁおそらくアイポンかなにかで撮ったものなのだらうが、すげぇ時代になったよな、と。

あそこでベースを弾いてゐたニール・フェアクローなる人のプレイが良かったな。おそらくは相当のテクニシャンなのだらうが、徹底的な脇役に回り、ひたすら堅実なサポートに終始してゐた。

そもそもクゥイーンの楽曲のベースラインは意味不明なものが多く、本職なるジョン・ディーコンの逸脱したセンスを感ずる。少年時代、コピーに一番苦労したのがジョンのベースラインだった。

フレディの死後『フレディ以外の歌のQueenなんてありえへんやろ』と公言し、さっさと引退してしまったジョン。

あぁ云ふ、およそ「ロック・ミュージシャンらしくない人」が一人混じってゐた、といふ事も、Queenの一筋縄ではいかぬ魅力ではあったのだ。

ジョンに幸あれ。そして、いま代役として確実な仕事をこなすニールにも。