週変わりのシュウ

桜もまた散りゆき

4月1日(月)

京都より、広島までの道をひた走る。

車での長旅にもだいぶ慣れた気はするが、車自体はだいぶヘタって来てをり、揺れも激しく、腰にクる。

好んでミッション車に乗ってゐるので、しーなさんに代わってもら訳にも(彼女はオートマ限定免許)行かず、年齢と共に、蓄積する疲労は隠せぬ。

これから先、あとどれくらい、同じやうに旅ができるだらうか?を考へる。

考へながら、広島へ帰る。が、ワシは金曜日からまた旅なのであった。

4月2日(火)

今月は旅が多いので、広島にゐる時間を最大限使って、できるだけレッスンコマ数を減らさぬやうに采配。壱日のコマ数が密を極める。

が、毎日これくらいレッスンが入れば、それもまた音楽家の人生としては上々、とも思ふ。事実、ここ数年の旅暮らしを始めるまでは、ワシもさういふ人生だった。

思へばワシにとっての「平成」とはさういふ時代だった。

アマチュアを抜け、独学で資格を取り、インストラクターをはじめ、ハコバンに従事し、オリジナルのバンドを立ち上げ、唄旅を始め、しーシュを結成し・・・。その間にMDとDATが誕生して消え、レコードをCDが席巻し、パソコンが普及し、ネット社会といふモノが生まれ・・・。

この5月から「令和」とやらになるさうな。

まぁ 元号なんて全然使ってないけどね。

4月3日(水)

旅の準備をしてゐる時に、立て続けにプライヴェートな電話があり、対応できずにゲンナリ。世界はワシを取り残してゐるくせに、多くを強いる。

けふは例によって過密レッスンスケヂュールにて、旅の支度をスタヂヲに持ち込んでレッスン。レッスンを終えた足でターミナルに向かい、深夜バスで上京の予定である。部屋の片隅に置いてあるスーツケースを見て、生徒が「あ、さうなんですね」のやうな顔をするのがオモロい。

最後の生徒さんが『車で駅まで送りませう』と云ってくれ、たいへん助かった。そのおかげでバスに乗り込む前の寝酒とツマミを買い込む事ができた。

さて、出発だ。寝ておれば朝には東京、なのだが、これが寝れんのよネ〜。

4月4日(木)じぶこん HSバンド・リハーサル

一昨日の回想ぢゃないが、唄旅を始めた頃は、この深夜バスでの上京がデフォルトだった。安さに惹かれての事だった。慣れたつもりでもなかなか熟睡は難しく、疲れは溜まる。

今回はとくに、前席の女がなんの断りもなく無遠慮に深々とリクライニングを倒しこみやがり、消灯後は空いてる席に無断で移動。おまけにえらいこと揺れるバスでもあり、もともとやや腰をイワしてゐたのが、東京に着いた頃には立派な腰痛になったおった。

ぐぬ〜。

とりあへず、定宿 吉祥寺の久保田涼子んところまで行き、仕事に出かけてゆく彼女と入れ替わりに、昼ごろまで寝かせてもらふ。買い物に行き、自分の昼飯と、りょーこが帰ったら食へるやうなモノを作り、けふは上石神井のスタヂヲまで、リハに出かける。

じぶこんHSバンド。2年前の7月にたった二日間だけ集った、日本中の旅する凄腕たち。その音を作品に残し、その完成を祝うライヴが明日と明後日、東京で行われるのだ。

じぶこんのタケポン&ゆうこの元に、島根から中嶋keiju(g)、長野から夏秋文彦(key)富山からヤマダベン(per)、そして広島からワシが集まった。全員が顔を合わせるのは、あの夏以来のこと。

 

4時間のリハもあっと云ふ間に終わる。

ワシは在京中はづっとりょーこん所にお世話になるつもりでゐたが、けふは「決起集会」といふか、まぁ再会を祝っての宴が用意され、それらに参加せぬはあまりに野暮よの、とけふは宴に加わり、ツイデに皆と一緒にタケポンちに泊めてもらった。

4月5日(金)じぶこんHSバンド「へそ祭り」第一夜@中目黒 楽屋

思へば腰痛はこの日がピークだった。

起き抜け、あまりの痛みに「すわ!?」と思ふも、足を引きずりながら近所の公園に行き、桜を愛でながらヲーキングし、鉄棒にブラ下がり、ストレッチしたり、としてゐると少しラクになった。

これで本番前にボルタレン座薬を突っ込めば、なんとかなるだらう。

さて、皆でバンに乗り合わせて会場入り。いつものじぶこんよろしく、沢山の有志が協力を申し出てくれてをり、もぅだいぶ顔なじみになった人達とも再会を確認。

会場の「楽屋」はじぶこんが絶大の信頼を寄せるPAオペレーターまっしーさんの経営するライヴハウス。ステージは6人が並ぶと流石に狭いが、補ってあまりある音の良さに、リハから感動。

今回、超個性的なメンツの中で どぅ自分を表現するか、を割と真剣に考へ、悪目立ちする事なく、徹底的にサポートに回る、といふスタンスを取ってみた。名古屋のWET BACKに参加した時のやうなかんぢ。

2年前の同面子での「へそ祭り」では、完全に体調を崩してをり、声もほとんど出ず、全然良い仕事ができなんだ憶えしかない。二度とあのやうな事をやる訳には行かぬ。まぁ今回も腰痛はキツいが、他は万全。座薬をケツに打ち込んで、いざ!。

バンドでの再演を心待ちにしてゐた満場のじぶこんファンと、それよりもさらにこの瞬間を待ってゐたワシらの思ひが、完璧に一致した素晴らしいライヴとなった。アルバム全曲+α 、たっぷりの演奏後もアンコールは鳴り止まず、終演後もサイン攻めが続き、片付けがなかなか出来ぬほど。

 

レコーディングに続き、このバンドで良い仕事ができた、との思ひが強い。のべ60人入った、といふ事だったが、あの場を共有した全ての人に、自信を持って「どうよ!?」と云へる良いライヴだった。

サポートに徹すれば徹するほど、個人への評価が高まるといふ図式も踏襲し、自他共に認める気持ちの良い初日だった。

4月6日(土)じぶこんHSバンド へそ祭り第二夜@神保町 楽屋

ゆんべは「楽屋」さんの上階スタヂヲに、スタッフ含む全員が寝袋で雑魚寝。本当は同会場での二夜連続ライヴを予定してゐたさうだが、事情によりけふは同じ「楽屋」の神保町店で、といふ事らしい。

神保町と云へば「古本の街」。そんな街にワシが行かぬ訳にはいかんだらうが?、といふ事で、ワシはひとり別行動を取らせてもらひ、神保町に先入り。

真っ先に目に飛び込んできたのは『猫専門』の本屋。写真集からエッセイ、物語に至るまで全て「猫」がテーマの書ばかりを集めた店。他にも音楽誌専門店とか、そんなかんぢの本屋がいっぱいあるのだから、そらぁ壱時間やそこらで満足できるハズもない。

あっと云ふ間に会場入りの時間になってしまった。

けふの「楽屋」は昨日の中目黒店より少し狭く、しかしステージは少し広い。それでもディジリドゥを含むメンバー6人が並んで立てば、広々使える、といふ訳には行かぬ。ワシは二日間ともステージ中央の一番奥に引っ込んで立つ形となり、しかしまぁよぅ踊るしよぅ歌うし、結果的によぅ目立ってゐた、と(笑)。

昨日のステージでなんか全霊を注ぎ込んでしまった感もなくはなく、けふのステージは割とラフな演奏。昨日に比べても即興部分が長く、昨日はなかったベース・ソロなどもあり、しかしその分「悪目立ち」してしまったかな、といふ感がある。自分的には反省点の多いライヴとなってしまった。

 

これがツアーとして以後何日か続けて行けば、また別の波が現れて育つんだらうけど、たった二日間の通しライヴ。残念だがけふを千秋楽とするしかない。ライヴ自体は悪くなかったのが救いかな?。

全員別の街に住んでる6人を、そぅしょっちゅう集める訳にも行かず、フルバンドでのツアーなどは難しからうが、まぁ可能な限りはワシも参加したいし、冗談交じりに出た海外ツアーやホールでのコンサートも、このバンドでは荒唐無稽な話ではなからう、と思ふ。

その機がある事を祈りつつ、好ましい二日間に、敬意と感謝と愛を。

4月7日(日)ソロ@北小金フィールスパーシュ

じぶこんを離れ、けふは一人で千葉県は北小金を目指す。

柏コネクションの一人、コラ奏者&ドラマーの坂入康弘の紹介で、彼が定期的に開催するライヴイベントのゲスト、といふ形でソロ。昨日までの大所帯からいきなり独り、てのが思ひのほか淋しく感じられ、しかし かういふ事をづっと独りで乗り越えてきたんよなぁ、と、電車で吉祥寺から北小金へ向かいながら、旅を始めた当初の感慨を憶ひ出した。

唄旅を始めて17年。なにか成長したのだらうかねぇ?ワシは・・・。

さて、初めて降り立つ北小金。事前に調べた情報で歩いてゆくと、すぐに会場が見つかる。フィールスパーシュは「Viel Spaβ 」と書き、こはドイツ語なのかな?。ザワークラウトとかカリーブルストとか、さういふビールに合いさうなメニュウがいっぱい。

坂入ちゃんと再会を確認しつつリハ、といふか音決めをして、しかしお客さんがどんなかんぢでどんな風にライヴ演るかが分からんので、極めて消極的に時間をやり過ごす。かういふのも初期のツアーで、全然知らん人の間に入ってって演ってゐた頃を思ひ出す。

対バンを引き受けてくれたのは坂入ちゃん(コラ)、浅川貴史(gu&vo)、深津良輔(カホン)のトリオ。この3人がなかなか良い。良いかんぢに会場をあっためてくれ、アンコールが来た。「演って良いですか?」と訊くので勿論どうぞ、と。ナンならワシも弾こうかな、といきなりセッションが始まる(笑)。これがもぅフィナーレぐらい盛り上がってしまい、『もぅワシ演らんでも良いんぢゃないか?』といふくらいに・・。

まぁ、さういふ訳にも行かず、しばし休憩の後、おもむろにステージに上がり、ベース弾き語りを始める。

最初は前ステージの余韻冷めやらずラウンヂ的なガヤだったが、構わずに歌を進めるうちになんか惹き込んできた感あり。ほぉ、と思ひ さらに進めてゆくとどんどん食いついて来てくれ、ビートルズなんぞ演った時には合唱まで起きる。極めつけはタマタマ表を歩いてゐて歌声が聞こえ、満席にも関わらず入ってきてくれた通りすがりの紳士二人、など、まぁ上出来中の上出来なライヴとなった。

良きライヴができた。少なくとも17年前に心もとなく東京に独りでやって来た頃とは また違う手応えを感じる事ができた。ワシはこれを演ってきたのだな、と。

坂入ちゃんもたいそう喜んでくれ、しかし『次回からがやりにくいわ』と(笑)。また来たいな。

・・にしても、柏と云ひ北小金と云ひ、この千葉あたりの音楽への対応感て、本当に素晴らしい。『どこの街に行ってもさう云ってるンだらう?』と突っ込まれはしたが、ホンマにこの辺り、大好きだ。

4月8日(月)帰広

ゆんべは柏に泊まった。

けふ、ちょいと興味深いライヴが三軒茶屋であるらしく、ツイデなので見て帰るかどーか悩んだのだが、まぁ無難に帰ることにした。

夜まで待ってまたバスに乗る、といふ手もないではないが、これまた無駄に疲れる事もないし、思ひ出せば腰が痛いのだった。

じぶこんの二日目以降は、それほど激痛は起こらず、まぁ普通に歩けるかんぢが続いた。痛み止めの座薬は手放せぬが、まぁこの調子で今月もぅ一本ある長い車旅を乗り切ろう。

広島に向かう新幹線の中では、ほとんど寝こけてゐたやうで、何度か自分のイビキで目が覚めた。迷惑な旅人である。