週変わりのシュウ
3月1日〜9日
良いニュースと悪いニュースがある
3月1日(金)ーーーーーーーーーーーーーー
恐るべきことに、もぅ3月である。
昨日までなんや温いな、と思ってゐたが、けふは寒い。まぁ『3月は寒いから』といふのは松ちゃんの名言だが、実際さうだよねぇ・・。「春」とは名のみの風の寒さや。
けふも超弩級に忙しいバイトをこなし、疲れ果てて帰る。
3月2日(土)ーーーーーーーーーーーーーー
用事のない週末が嬉しい。
吉田拓郎のふる〜い歌に『これから君は週末だけを待つんだね〜』とか云ふのがあって、まぁあんなかんぢだが、それには「うるせぇ」と思ふ。
SNSに上がってくる同業者たちの華やかな記事に綴られた、なんと晴れやかな忙しき日々よ。私にもかつて確かにあったそのやうな日々。こんなヒマな50代が来るとは思ってもみなかった。それはやはり、かつて存在した私の年配の友たちの、しめやかな晩年の暮らしぶりともオーヴァーラップする。
例えば年若い友人から見る今の私は、もぅ「あそこ」にゐるのだらうか?。
3月3日(日)カワムラ祭 Let’s Go 50ーーーーーーーーーー
けふはカワのじの50歳を祝うイベントに、ぱんぱかトリオとして参戦。
ぱんトリが去年10周年だったやうなので、カワのじと知り合ってもぅ20年近くか・・などと。けふはぱんトリの他に、カワのじが所属してゐるバンドやユニットも総動員で、ダンサーも居り、舞台裏も華やか。
当然カワのじは出ずっぱりで、ソロからユニットに至るまでずっとステージの上。お客さんの入りも上々で、此処数年、意図的に大会場でのライヴを展開してきたカワのじの結実、といふかんぢのライヴとなった。
たびたび書いてゐるが、ここ1〜2年のカワちゃんの「音楽的な充足」は見事なもんで、ぢつは私が密かに思ってゐたこの男の「音楽力の高さ」みたいなもんも、しっかり出せてゐたイベントだったと思ふ。なんか以前は「頑張って」ライヴをやってる、といふかんぢだったのが、ここ数回一緒にやる限りは、カワちゃんも「楽しんで」ゐるやうで、そはバンドメンバーとしては嬉しい。
脇役に徹しながらも、良きサポートを添えれたならば嬉しいな。
打ち上げは事情あってノン・アルコールだったが、それは気にならんかんぢで楽しかった。みんな長くこの界隈で活きてゐる人たちなので、思ひ出話にも花が咲き、まぁ願わくばこのままこのかんぢで、みんな歳をとって行けたらいいな、と願わずにはおれない。
あ、ちなみにこの日は、ヴァイオリンベースとアトランシア、といふぢつに両極端な二本差しで演った。
3月4日(月)ーーーーーーーーーーーーーー
けふはバイト(激忙)のあと、アビエルトにライヴを見にゆく。
以前から名前を見聞きしてゐた泉邦宏さん(sax)のソロ公演。
まぁいわゆる「渋さ〜」系のジャズの人で、共通の共演者もいっぱいカブってゐて、しかしまだお会いしたことはなく、ソロを見るのも初めてで、楽しみにしてゐた。
もっと歌ものを聴きたかったのだが、本人曰く『最近は(自分的)ブームでない』とのことで、ループを使ったサックスのソロ演奏が中心。即興系の人なのでガッチリしたものではなく、むしろ予測のつかぬズレの妙を聴かせるタイプのもの。それなりに楽しいんだが、どれも同じ展開(ベース→上物→ソロ→インプロ→歌→混沌)で、せっかく即興ならもぅ少し別のパターンも見せて欲しかったかなぁ?。
あと、チョいと音が酷くて耳がヤラれさうだった。バイトで疲れた身体にはキツかったな。ので、打ち上げには参加せずに、そのまま退散。
やっぱり正直なところ、即興系のライヴは見るより演るほうが100倍楽しい。
3月5日(火)ーーーーーーーーーーーーーー
性根の入った雨。
ぢくぢくと寒く、家にゐるのがツラい。北海道の友人が『なんで本州の人は家の中をあんなに寒くして我慢してるんだ?』と言ってたが、まぁわかる気がする。道人はとにかく家ん中をポカポカにしてるからねぇ。
一時期の「グレン・ヒューズ熱」から、今度は「ロジャー・グローヴァー熱」になって来ておる。同じパープルのベーシストながら、個性がまったく違うふたり。この「推し」の変化は、私の興味がいま「歌唱」から「作曲」に移って来てゐることの表れかもしれない。
あらためてグローヴァーのロック・オペラ「バタフライ・ボゥル」を聴くと、私は自分が好きなかんぢ、といふのを認識させられる。私がQueenやビートルズ(の後期)を好きなのもここ、ズバリ「なんでもあり」な音楽。サウンドやコンセプトが同軸なものではなく、もぅありとあらゆるものが混在する音楽。私が好きなのはそんなものなのだ。
ところでこの「バタフライ・ボゥル」。
アルバムとほぼ同じものがライヴでも上演されてゐて、DVDにもなってゐる。まぁ当然ながらその出演者たちの豪華絢爛なことよ。
だが、いかんせん古い時代のものなので、今みたいに音楽ビデオに特化したカメラワークなんてものはなく、せっかくライヴなのに演出のサイケ映像やマペットによるパフォームが入ってゐたり、ソロを弾いてる人の顔ばっかりがアップになったりしてて、いわゆる「映像価値」は低い低い。
3月6日(水)ーーーーーーーーーーーーーー
バイトからレッスン。
私のベース教室に、去年の秋口までふたりだけゐた高校生の生徒のひとりが、受験の終了と広島を離れる旨を伝えに、わざわざ教室へ顔を出してくれた。母親が私の女房の古い友人、てこともあらうが、今どきちゃんと挨拶しに来て巣立つやつも珍しく、その旅立ちを寿いだ。
一人暮らしを始めるにあたり「不安しかない」と こぼすが、将来的に絶対にやっておいてよかった、と思ふはずなので ぜひ頑張れ、と伝えておいた。一人暮らしは10代で経験しておくべきだ。自分一人の力で暮らしを築くが良い。お前の人生に幸あれ。
3月7日(木)ーーーーーーーーーーーーーー
なんとまた新しいベースを買ってしまった。
ヘフナーである。
ヴァイオリン・ベースに関しては、本家ヘフナーのものと、もぅすこし実用性の高いグレコのコピーモデルを所有してゐて、これに関してはもぅよい、と思ってゐるのだが、「クラブ・ベース」といふタイプのやつに前々から興味があり、こたび屋府億で出てたやつを思ひ付きで入札したら落札してしまった。
いわゆる「アーチトップ・タイプ」のシングルカッタウェイのモデルで、ヴァイオリンベースに比ぶれば人気は低いのだが、私個人的にはシングルカッタウェイの楽器が好きなので、むしろジャズベやプレベより欲しかったタイプなのだ。まぁ出品の概要欄には良いことが書いてあったが、それを鵜呑みにするほど私もウブではない。けふ届いたそれを梱包から取り出し、2時間ぐらいかけて調整す。
ヴァイオリンベースに比べても格段に本体が軽く、立って弾く場合ヘッド落ちが心配だが、まぁおいおい解決させてゆこう。まづはリハで使ってみん事にはネー。
3月8日(金)ーーーーーーーーーーーーーー
29年前の3月21日に結婚したのだが、その祝いを、記念日当日は遠征にて不在なので、けふ祝う事にす。
どのみち「式」を挙げたのが21日、といふだけで、実際に一緒に暮らし始めたのはちょーど今頃だったと記憶してゐる。お互いが一人暮らしからの結婚だったため、荷物の搬入がけっこう大変で、当時私が乗ってゐたボロボロの軽自動車で何往復もした。
その仕上げの日に、それぞれの部屋の鍵を返し、最後の荷物と共に新居へ向かい、途中で適当なファミレスに寄りその数日へのお疲れ様を乾杯したのであった。その後に挙げた友愛溢るる「式」もよかったが、私的にはこの深夜のファミレスでの乾杯こそが、「結婚」といふ出発だったと、今も思ってゐる。
それから29年経った。これからもお互いに健やかであれ、と思ふ。
3月9日(土)ーーーーーーーーーーーーーー
来週から始まるわりと長めのツアーに向けて、最後のリハ日となる。
なにせ今年に入ってからのライヴ数が決定的に少ない我ら。この際なのであまり凝ったことは考えず、むしろ初心に帰るやうなつもりのラインナップで構成し、ひとつひとつを丁寧に演ろう、と決める。
さういやここ数回のライヴで、こんだけ長い間ライヴでのハイライトになってゐる「砂に泣き」で歌詞が出てこない場面が何度かあり、知れ渡ってゐる曲だけにお客さんもニガ笑い、みたいなかんぢになってゐて、あれではイカン、と・・。演り慣れてゐる曲だからこそ、丁寧に歌い演奏することを心掛けるツアーとせん。
夜はヲルガン座にひとりライヴを見にゆく。
ヲルガン座 最年少スタッフ ワカバちゃんが在籍するジャズトリオEBA(いーば)のライヴ。まぁ「ワカバちゃん」と呼ぶほど親しい訳ではなく、むしろ会うのはけふで2回目(笑)。前回ヲルガン座でライヴをやった時、新人スタッフの中にえらいべっぴんの娘がゐるな、と思ってゐたら『私もベース弾きなのです』といふ事で、その時けふのライヴに誘われた。可愛い娘に誘ってもらうのは老人の日々最大の愉悦なので、いそいそと足を運んだのだ。
けふは彼女の『卒業ライヴ』ださうで、この春大学とヲルガン座でのバイトを卒業し、東京で就職するらしい。バンドも大学の軽音部で構築されたメンバーの様子。おそらく学友らしい若い人々で、ヲルガン座はいっぱいだった。
現代風のクールなオリジナルのジャズを演るトリオで、やっぱり今どきの子らはこの感覚をフツーに演っちゃうんだな、とある意味羨ましく思ふ。
『スタンダードを演らなきゃダメだよ』と云はれて育った我ら世代のジャズ屋とは、根本的に違うんだなぁ。
ワカバちゃん、ちゃんと挨拶に来てくれて礼を述べてくれた。
「東京でも音楽は続けます」と云ふ彼女の未来に、多くの幸が在らんことを!。