週変わりのシュウ

旅先の猫 (エッセイ付き)

旅先の猫

カミングアウトしてしまふと、我々夫婦は、町中とかで猫を見かけると、『とんとこ!!』と叫んでしまう癖がある。

これは幼少時代のワシが、猫に限らず、小動物がただぼんやり座ってゐる様を表現した独特のオノマトペなのだが、それを妻に話した所、いたく気に入り、二人して使うやうになった。

正しくは『猫が、とんとこ、と座ってゐる』といふ使い方をする。アクセントは最初の「と」に付き、最後の「こ」はほとんど発音されない。太った猫などには『どんどこ』とも云ふ。犬や、イグアナなどにも使うが、馬や、象などには、あまり使わない。

猫を見かけると、とんとこ!!と云っては、なごんで眺める。

あまり構うのは、猫の流儀に反する。

何より、彼らは、人間に構われる事が、あまり好きではないのだ。

こちらが「とんとこ!」と云ふ声に驚いて逃げて行くのも居る。その時は、悪い事をしたな、と思ふ。

色々な場所に行って、色々な猫に会う。

逃げるやつもゐる。

ここに載せた猫達はみな、カメラを向けても「とんとこ」と座ったままだったのばかりだ。

猫がさういふ風に暮らしてゐる所は、多分、良い所なんだと思ふ。

彼らが、やはり今も「とんとこ」と座って、何ものにも動じないで済む生活を送ってゐる事を、祈りたい。